薬物療法について
向精神薬:脳の中枢神経系に作用し、精神機能の治療全般に用いられる薬物全般
抗精神病薬
別名:強力精神安定剤、メジャートランキライザー、神経遮断薬
対象:統合失調症、躁病、重度うつ病、重症不眠症、せん妄、覚醒剤中毒など
効果
幻覚・妄想、興奮、不穏、錯乱、強度の不安感、衝動行為(陽性症状)などの改善と鎮静を行う
特徴
- 安全性が高い↓
- 依存を起こしにくい
- 血圧や呼吸にも影響が少ない
副作用と注意
- パーキンソン症候群:仮面様顔貌、手足の震え、小刻み歩行、流涎などが代表的
- アカシジア:下肢の絶え間ない動きやむずむず感が代表的
- 口渇
- 排尿障害
- 尿閉
- 眠気
- 体重増加
- 糖尿病悪化
など。
長期的→顔面、口、顎などが意図せず動く遅発性ジスキネジア
まれに→悪性症候群
睡眠薬
大脳が興奮して不眠を招いたときに用いられる薬剤。
睡眠障害を引き起こすメンタル疾患全般に用いられる。
主にベンゾジアゼピン系(ジアゼパム、ニトラゼパムなど)の抗不安薬のうち、眠気が強く起こるものを用いる。
- 習慣性がないこと
- 寝付きが良いこと
- 目覚めが自然であること
などが求められる。
効果
少量では鎮静効果。
作用の持続時間によって超短時間型、短時間型、中間型、長時間型に分類される。
内服してから徐々に血中濃度が上昇し、15~30分で眠気を感じ始め、1~3時間で最高血中濃度に到達する。
種類
半減期:肝臓で薬剤成分が分解され、血中濃度が最高濃度の半分になるまでの時間
種類 | 半減期 | 作用時間 | 用途 | 一般名 | 薬名 |
超短時間型 | 2~4時間 | 2~4時間 | 入眠困難 仮眠 時差ぼけ 反跳性不眠 | ゾルピデム トリアゾラム ゾピクロン | マイスリー ハルシオン アモバン |
短時間型 | 6~10時間 | 6~8時間 | ブロチゾラム ロルメタゼパム 塩酸リルマザホン | レンドルミン ロラメット/エバミール リスミー | |
中間型 | 12~24時間 | 6~10時間 | 中途覚醒 早朝覚醒 熟眠障害 ストレス 日中の不安・焦燥感 | フルニトラゼパム ニメタゼパム エスタゾラム ニトラゼパム | サイレース/ロヒプノール エリミン ユーロジン ネルボン/ベンザリン |
長時間型 | 24時間以上 (~40時間) | フルラゼパム ハロキサゾラム クアゼパム | ダルメート/ベノジール ソメリン ドラール |
睡眠薬の強さ
ハルシオン、サイレース/ロヒプノールが比較的強いと言われるが、プラセボ効果や個人差があるため一概には言えない。
副作用など
- 持ち越し効果
- 健忘
- 筋弛緩作用
- 長期間服用で常用量依存(臨床用量依存・低用量依存)になることも
- 急に中断すると反跳性不眠に
注意
- 超短時間型と短時間型は服用後健忘が起こりやすいため、すぐに入眠できるようにしておくこと
- 妊娠の可能性がある場合には、可能性がある段階で主治医と相談すること
抗不安薬
別名:緩和精神安定剤、マイナートランキライザー
主にベンゾジアゼピン系を用いる。
対象:神経症、心身症、うつ病(抗不安作用)、睡眠障害(催眠作用)、てんかん(抗けいれん作用)、腰痛・肩こり・頭痛(筋弛緩作用)
作用
脳内GABA(抑制性神経伝達物質)を増強させて不安や緊張、不眠を改善させる。

特徴
- 耐性が形成されにくい
副作用など
- 眠気
- ふらつき・脱力
- 長期的→依存症となること有り
禁忌
- 緑内障
- 重症筋無力症
抗うつ薬
抑うつ症状(抑うつ気分、意識低下など)改善のために用いる。
対象:強迫神経症、パニック障害、PTSD、その他抑うつ症状を起こすメンタル疾患全般
主に三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)を使用。
画像はhttp://www.myojin-kan.jp/kabin2/,https://kusuri-jouhou.com/pharmacology/utu2.htmlより引用
効果
うつ病自体、脳内のセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の不足によって起きると考えられているので、神経伝達物質の濃度を高める抗うつ薬の効果が見込まれている。
副作用など
三環系抗うつ薬・四環系抗うつ薬
- 口渇
- 便秘
- 排尿困難
- かすみ目
SSRI・SNRI
- 吐き気・食欲低下などの胃腸症状が多い


禁忌
三環系抗うつ薬と四環系抗うつ薬では
- 緑内障
- 尿閉
抗躁薬
主に炭酸リチウムと抗てんかん薬(カルバマゼピン、パルプロ酸ナトリウム)を用いる。
血中濃度を測定し、有効血中濃度を維持できる量を服用(治療薬物モニタリング)。
効果
躁病に用いる。
副作用
- 初期
- 口渇
- 悪心
- 嘔吐
- 下痢
- 過剰投与
- 傾眠・昏睡(中毒症状)
抗てんかん薬
てんかん発作へ使用。
発作のタイプによって適した薬剤を選択する。
使用量は治療薬物モニタリングにより決定。
画像はhttp://www.myojin-kan.jp/kabin2/より引用
効果
- 神経細胞の過剰な興奮を抑制
- 過剰な興奮が広がるのを防止
副作用
- 倦怠感
- めまい
- 発疹
- 胃腸障害など
嫌酒薬
飲酒制限のために服用。
アルコール依存症であることを認めた上で積極的な断酒の意志がある場合に補助的に使用。
主にシアナミド、ジスルフィラムを用いる。
使用すると一時的にアルコールを受け付けない状態になる。
効果
- シアナミド:エチルアルコールの分解過程を阻害
- ジスルフィラム:アセトアルデヒドが酢酸になる過程を阻害
副作用
- 吐き気
- 頭痛
- 倦怠感
- 不眠
賦活薬
主にメチルフェニデート。
対象:ナルコレプシー、ADHD
注意
- 依存症になりやすい
参考:精神医学各論及びケアストレスカウンセリング公式テキスト