ストレスによる病気
まずストレスと身体、ストレスとこころの病気の概要を述べる。
心身症
定義は→https://harukams-medicalbeauty.com/scs14/
ストレスが病気の起こり方や進行に密接に関係している身体の病気の総称
まず除外診断を行い、原因がストレスであることを確定させる
- 高ストレス者に留意すべき心身症の例
部位 | 主な症状 |
呼吸器系 | 気管支喘息、過換気症候群 |
循環器系 | 本態性高血圧症、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞) |
消化器系 | 胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、心因性嘔吐 |
内分泌・代謝系 | 単純性肥満症、糖尿病 |
神経・筋肉系 | 筋収縮性頭痛、痙性斜頚、書痙 |
皮膚科領域 | 慢性蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症 |
整形外科領域 | 慢性関節リウマチ、腰痛症 |
泌尿・生殖器系 | 夜尿症、心因性インポテンス |
眼科領域 | 眼精疲労、本態性眼瞼痙攣 |
耳鼻咽喉科領域 | メニエール病 |
歯科・口腔外科領域 | 顎関節症 |
ストレスによる自律神経の乱れ→自律神経失調症
心的外傷およびストレス因関連障害(DSM-5)
ストレッサーが直接精神疾患の原因となるもののDSM-5での総称。
適応障害
症状
- 抑うつ気分
- 不安感
- 行動障害(攻撃的行動など)
- 身体症状
- 社会的引きこもりなど
- 不適応症状
ストレッサーがなくなれば6ヶ月以内に治癒
外傷後ストレス障害(PTSD)
症状
非常に強いストレス状況を体験(心的外傷)後に
- 強い恐怖
- 無力感
- 感情の麻痺
- フラッシュバック
- 外傷体験に関係のある状況や場面、人物を避ける
- 睡眠障害
- 過剰な警戒心など
急性ストレス障害
外傷後4週間以内に起こり、2(min)~4(Max)週間持続
神経症
DSMやICDでは用いられないが、日本ではよく用いられる不安や恐怖、緊張といった症状の総称。
- 不安神経症
不安が大きすぎて日常生活に支障をきたす病態。
心の弱さのせいではなく病気である、と病識をもつと大丈夫なことが多い。
- パニック障害
過換気発作(過呼吸)と、それに伴う酸素の吸いすぎでのアルカローシスにより脳血管が縮み脳貧血になる症状が多くみられる。
- 全般性不安障害
社会不安や恐怖症の症状でも現れるが、
- 選択的緘黙:他の状況では話せるが、特定の話すことが期待される状況では一貫して話すことができない。最低1ヶ月持続。
- 緊張症:緊張のしすぎで過呼吸やカタレプシー(蝋人形のように固まる)などにより社会生活に支障をきたす病態。
なども含まれる。
ストレス対処法
外部からの刺激はすべてストレッサーであるため、ストレスの完全除去は不可能。
ストレスの必要性
そして快いと感じる程度のストレス(刺激)は日常生活に良い影響をもたらす。
また人間にはストレス耐性があり、同じ程度の同じ刺激を繰り返し受けているとそれに適応できるようになる。
そうした適応経験がフラストレーションへの対応能力を高める。
ストレス耐性
ストレス耐性に影響を与える要因
- パーソナリティ(考え方や行動パターン)
- 人生経験
ストレス耐性を高めると…
- ストレッサーに強くなる
- ストレスを良いストレスにできる
- ストレスをこまめに解消できる
ストレス分析
ストレス耐性を高めるために
- 何がストレスか?
- ストレス反応として何が出るか?
- どの程度影響しているのか?
- 対処法として何が有効か?
などを客観的に把握・理解し、単純にストレッサーを減らすだけでなく、自分なりの方法で適切に対処するストレス・マネジメントが求められる。
何がストレスか?
- 家事・育児・介護が完璧にできない
- 自分の時間が取れないこと
- 家族関係
- 仕事が忙しい
- 同僚・クラスメイトとの付き合い方
- 予定通りにいかないこと
- 評価されないこと・変化がないこと
- 期待されすぎること・目立つこと
- 睡眠不足・空腹
- 体調不良・持病など
ストレス反応として何が出るか?
どの面に、どんな反応が出るかを把握する。
- 身体面:腹痛、頭痛、動悸、食欲不振など
- 精神・心理面:怒りっぽくなる、集中力がなくなる、マイナス思考になるなど
- 行動面:過食、飲み過ぎ、動作が鈍くなる、雑になるなど
どの程度影響しているのか?
- 自分で対処ができるレベル
- 現在ストレスとなっているレベル
- 外部のサポートが必要レベル
対処法として何が有効か?
- 休養、趣味、友人と話して解消など
- 介護サービスや地域サポートの導入の検討など
- それ以外の何かの対応が必要(相談窓口に連絡)など
環境分析
自分では対応しきれないときの、4つの側面へのソーシャル・サポートは以下の通り。
- 情緒的支援:共感、配慮、信頼など人間関係について
- 道具的支援:仕事の分担、看病、経済的支援などの直接的支援について
- 情報的支援:有益な情報の提供について
- 評価的支援:その人の考えや行動を認める支援について
ストレス・コーピング
ストレス・コーピング:ストレス分析を行いストレッサーに対し適切な対処をすること。ラザルスが提唱した理論。大きく2種類。
情動焦点型コーピング
- 目的:不快な情動のコントロール
- 行動:問題を回避、否認、感情発散など
自分では問題解決が不可能な場合に取られやすい
子どもや比較的若い人も取りやすいといわれる
問題焦点型コーピング
- 目的:問題自体の解決
- 行動:ストレス状況の中で問題を分析、どう解決すべきか考え実行
ストレス・マネジメント
情動焦点型コーピング→問題焦点型コーピングという、落ち着いてから問題解決を図る方法もある。
以下は具体例。
- 我慢:慣れたり気にならなくなることも
- 回避:意識的、積極的にストレッサーを避ける
- 忘れる:忘れられるものは忘れるに限る
- 相談:話を聞いてもらうだけでも良し。自分では気づかないアドバイスをもらうも良し
- 主張:状況改善のための自己主張をしてみる
ストレス軽減のリラクゼーションについてはこちら
ストレスに気づくために
ストレスへ早く気づき病気になる前に対処するには、ライフスタイルを見直すとともにライフカルテを作り、充分に休養することが重要。
ライフスタイルの見直し
1週間の行動記録をざっとつけてみる。
睡眠時間や食事時間のばらつきが見えたら、理想とするライフスタイルを長期目標、理想へ近づくための当面の行動目標を短期目標として行動してみる。
ライフカルテの作成
現在の状況、生活環境、生活背景、ストレス状態、ストレス・マネジメント能力などを記入。
ストレスのセルフチェックには厚労省の「こころの耳」が簡単。
休養する
1994年現厚労省設定の健康的な生活を送るための4か条は以下。
- 生活にリズムをつけて、労働と休息のメリハリをつける
- 1日30分は自分の時間を確保し、休暇を活かして休み心のゆとりも持とう
- 身近な中にも憩いを感じ、食事空間にもバラエティを見出し、自然とも触れ合おう
- 楽しく無理のない社会参加で育んだ絆でクリエイティブな人生を贈ろう
他、2014年に改訂された「健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~」は以下。
出典元:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf
参考本↓及び精神医学各論