以下ではMS(多発性硬化症)の診断基準を噛み砕いて説明させていただきます。その際の若干のニュアンスのズレなどは、どうかご容赦くださいませ。
MSの診断基準
MSの診断基準は、端的に申しますと、中枢神経系(脳と脊髄)の病変が
- 時間的に多発
- 空間的に多発
する、ということです。
「時間的に多発」とは、「炎症が起こり、治まり、を繰り返す」ということです。
「空間的に多発」とは、「中枢神経系の中の異なる場所に病変が複数存在する」ということです。
この2つを満たし、他に症状が似た疾患が除外されれば、MSと確定診断されます。
診断基準の変遷
MSの診断基準は、MS自体の解明がまだ進んでいないために、かなりの変遷を辿ってきました。
そして現在も、改訂が繰り返されている最中です。
10年ほど前までは、血液検査で「オリゴクローナルバンド」が陽性と判断されれば即MSと診断されることもありましたが、現在はオリゴクローナルバンドが陽性と出る疾患は多数あるために、その診断法は除外されました。
オリゴクローナルバンドがMSの診断に重要な因子の1つであることは確かです。
たとえば上の「時間的に多発」というものでは、
再発を確認してからでないとMSと診断できず、治療を始められないと、手遅れになることが多々あるために、現在では炎症が1回目でも一定基準を満たせばMSとの診断が下ります。
わたしの場合は、症状が出た炎症は今回が1回目でしたが、脳病変が他に16箇所あったこと、他の疾患が否定されたことなどからMSと診断されました。
また、もし再発・増悪と認定されるためには、「1ヶ月以上間隔を開けて、24時間以上継続する炎症」が必要となります。
鑑別が必要な疾患の中には遺伝子検査が必要なものまであり、そこまで検査せずにMSとの診断が下るのも現在の特徴です。
必要な検査
診断基準を簡単にご説明させていただきましたが、これらを証明するには
- MRI(通常と造影)
- 頭部CT
- 髄液検査(脊髄穿刺)
- 血液検査
などが最低限必要となります。
かなり簡単なご説明となりましたが、参考になれば幸いに存じます。
ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。
参考:神経障害理学療法II、体験談、担当医の話、
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/msgl/koukasyo_onm_2017_08.pdf
追記:画像を撮影したものになるので少々見づらいですが、わたしのMRI画像の一部を載せさせていただきます。
こちらが以前の病変部位
こちらが今回の炎症部位となります。