はじめに
以下では、11月に大阪で行われたMSコムラードのセミナーと、12月に東京で行われた国立精神・神経医療研究センターのセミナーから、MSと腸内フローラの関係性について述べた部分を統合してお伝えさせていただこうと思います。
腸内フローラについて
人間の体内には多くの菌が生息していて、その菌たちがバランスを保って共存していることで、消化や免疫などの役割を果たしています。
この菌たち、特に細菌たちの塊を細菌叢、または細菌フローラといいます。
人間の体内で細菌の多い場所は、口、そして腸などで、近年注目を集めているのがこの腸内での細菌叢「腸内フローラ」というわけです。
腸内フローラと疾患
腸内フローラと、MSやI型糖尿病などの自己免疫疾患は関係することがわかっており、
自己免疫疾患をもつ患者では、健常者と異なる腸内フローラが形成されていることが最近の研究でわかってきました。
腸内フローラとMS
まず、MSのリスク因子として報告されていたものですが、
- 塩分の過剰摂取
- 遺伝因子
- 喫煙
- EBウイルスの感染
- 少ない日照時間
とのことなのですが、日本では
- 塩分摂取量についてかなり規制されている
- ほぼ単一民族で移民も少なく、遺伝因子が大きな原因とは考えにくい
- 日照時間も特別少なくはない
- 他は個人差
ということで、「環境因子」の、特に「食の欧米化」による「腸内フローラの変化」が要因として挙げられるのではないか、というのが、国立精神をはじめとする各大学病院の研究の発端です。
そして糞便から採取した腸内フローラの構造(種類と数)の調査の結果、
ことが判明し、
また、
再発寛解型、二次進行型、非典型型、健常者でも比較したところ、
Eubacterium Rectale (ER)という細菌が、MS患者では特に減少していることがわかりました。
また、
- 再発が多い人ほど
- EDSSが高い人ほど
ERが少ないという研究結果が報告されています。
このERという細菌は、食物繊維が減り、動物性の食事内容が増えると減少する細菌と言われています。
こうした細菌の実験はマウスで行われて終了することが多いのですが、
MS患者に5日間、
食物繊維を充分に与えたグループと、
動物性の食事を中心にしたグループとで
症状の変化を見たところ、
食物繊維を充分に摂取したグループの方が体調が良いという結果も出たとのことです。
MSの症状を改善するには、食物繊維をきちんと摂取する生活を送ることが良いかもしれません。
問題点
ただし、この論文らの問題点は、
- MSの原因をリンパ球T細胞としている点
- 支持する論文がまだ少ない点
にあります。
MSの原因はリンパ球のT細胞かB細胞かもまだわかっていないのが実態であり、研究者によって主張は異なります。
また、人間で実験するには母数も少なく、大体がマウスになってしまうことや、塩分摂取量が多い方が平均寿命が長くなる、などの正反対の論文も出ていることから、結局は
となってしまいます。
以上が、大阪と東京で開かれた腸内フローラとMSに関する研究報告の内容です。
専門的なデータや用語解説については省いてありますが、重要だと思う部分だけ載せています。
参考になれば幸いに存じます。
追記:食物繊維豊富な食べ物について→https://harukams-medicalbeauty.com/fiber/
参考:MSコムラードセミナー及び国立精神・神経研究センターセミナー講義内容、
多発性硬化症協会資料等