「ハイリスク妊産婦」とは言われながら、自分はそこまでハイリスクじゃないだろうと思っていました。
それが甘かったなという話を、きっと忘れる未来への教訓として残しておきたいと思います。
麻痺や痙攣のある方、免疫の低い方などの妊娠時の参考になれば幸いです。
妊娠初期、中期ではあまり実感がない
わたしが妊娠に気づいたのはすでに妊娠中期に入ってからでしたが、わたしの場合は、初期や中期には特に何も思っていませんでした。
持病が山ほどあるのと、時には痙攣も起こすためにハイリスク妊産婦の認定は受けていました。
それでも自分ではそこまでのリスクを感じていませんでした。
もちろん片麻痺としての不自由さはあり、服薬中の悩みもあり、麻痺のためよく転ぶなどの危険性もあり…と、通常の妊産婦と同じようにいかなかったのは確かです。
ただわたしは、他の人が言うほど心配はいらないのではないかと思っていました。
つわりは重く一時は水も飲めなくなりましたが、それは個人差で誰にでも起こることですし。
病院が異常に警戒した「痙攣」正解を知る
はじめは「その麻痺の体で出産はできるのか」と身体状況を心配され、地元に帰って病院にかかるよう言われました。
里帰り出産のはじまりです。
痙攣と妊娠、出産の心配
そこから次は、妊娠中に全身痙攣、呼吸困難を起こして赤ちゃんを流産・死産する可能性を考えられました。
「痙攣を起こすな」
「心臓発作を起こすな」
「喘息を起こすな」
「発作のトリガーとなるストレスを受けるな」
などなど…。
今もそこは気をつかっているところです。
出産中に痙攣して、産まれた赤ちゃんを踏み潰さないかの心配もされました。
脳神経内科の主治医は「君は硬直性が多いから踏み潰しはしないだろう」と言いましたが、やはり結局は痙攣の心配がまさって帝王切開が決まりました。
痙攣を心配されて病院を転々とする
そこからは、下半身麻酔の注射で痙攣を起こす心配をされ、途中で全身麻酔に切り替える可能性を示されました。
そうなると通常の産科では診られないと、NICUのある病院へと移ることが決まりました。
起こらなかった痙攣が起こり始めた
この辺りまでは、他の人が心配してくれているだけでした。
ほとんど大きな痙攣を起こさずに過ごせていたわたしにとって、痙攣の心配はそこまで大きくありませんでした。
しかし2週間ほど前、ついに大きな痙攣を起こしてしまいました。
幸いにも呼吸困難にまでは至らず、両腕両脚が硬直して、しばらく使い物にならなくなるだけで済みました。
ただ右半身だけで言えば、その前後にも強直性痙攣を起こしていて、数か月、毎日数回程度まで静まっていた痙攣が強くなっているのを感じていました。
だからといって妊娠中の身に筋弛緩剤を使うことはできず、「ただ耐える」一択になりました。
春の天気は変わりやすく、気圧や天気の影響をモロに受けるようです。
母体優先から胎児優先にするための全身麻酔
出産は基本的に「母体優先」の原則があります。
まだ生まれていない命より、今生きている命。
そんな天秤で、赤ちゃんの命よりも私の命が優先されます。
医師に提示されたのは、その原則のなかで赤ちゃんの命を優先するための全身麻酔でした。
私の痙攣を抑えるために、全身麻酔で意識を失くし、呼吸も止めることで、医師たちは赤ちゃんにかかりきりになれるということです。
赤ちゃんも麻酔で寝る可能性があり、生まれた瞬間に泣かず生きているのかわからないという不安もありつつ、
とりあえず赤ちゃんの命自体が助かるのはとても大事なことなので、私は了承しました。
「気管挿管するけど歯は丈夫?折れることがあるから」との説明には笑いそうになりましたが、ステロイド元服用者のわたしは全然笑えず、今の骨密度を思い出す羽目になりました。
全身麻酔で起こりうる副作用には私が昔、血漿交換で起こしたものもあって、
自然分娩も可能かもしれないと言われていた当初から思えば、転々としてたどり着いた病院でもまあまあなことになるのだなと。
結局は医師に従えるかどうか
ハイリスク妊産婦でなくても全身麻酔のリスクは変わりませんが、他に無事に出産を終える手立てがないというのは、ハイリスクならではかと思います。
当然ながら無痛分娩などを祈れる立場でもなく、出産の可否から方法まで医師に同意できるかにすべてが懸かっています。
「こうしたい」が通らない世界、分娩方法はたくさんある時代なのに、それでも選べない現実を痛感しています。
よく警戒される麻痺は自分が思うより大変だ
採血などでもよく警戒されるので麻痺は気にしているかと思いますが、妊娠中は予想よりも大変です。
むくみを解消できず、血栓もできやすい
妊婦体操というものがありますが、わたしはなにせ麻痺が強く、簡単なものですら実践できません。
そのためむくみやすく、これまではほとんど体重増加もなかったのに、ここ1か月ほどは足がパンパンの紫色です。
薬の副作用や元々の症状として口渇もあるため、水分を1日に2〜3リットルとることも原因でしょう。
妊娠するとただでさえ鼠径部を圧迫して血液は流れにくくなります。
飲まなければ血はドロドロになり、飲めばむくみが増していく。
どれだけマッサージしても血が止まります。
血栓疑いで頻繁にエコーを撮っています。
保健師さんなどにも尋ねてみましたが、麻痺があって脚を動かせない以上、解決法としては「塩分をとりすぎないこと」しかありませんでした。
でもいくら気をつけたところで、栄養を赤ちゃんに取られる以上はある程度の塩分は必要です。
痙攣にしか動かない、変色した象の足を見る度に、なんだかなあと思います。
「動けない、動かせない」それがすべて
「赤ちゃん抱っこできますか」
「どうやって育てるんですか」
「ヘルパーさんは赤ちゃんの面倒みられませんよ」
と誰に聞いても言われる通り、障害者が子どもを産むことをそこまで深く考えていない(のか、障害者には子どもを産んでほしくないのか、の)日本には、障害者を支援するサービスはあっても、障害者の育児を支援するサービスや、代わりに赤ちゃんのお世話をするサービスはありません。
ヘルパーさんを頼っても、それはあくまで「わたしに対する」ヘルパーさんで、赤ちゃんのお世話はわたしです。
(当然といえば当然ですが)
そこへかけられる、「その体でどうやって育てるの?」という言葉、端的に言ってめっちゃ凶器です。
麻痺のある方は、健常者以上にその後の育児まで考えて産むべきだそうです。
自己免疫疾患なのに肝心な自己免疫が低いせいで
今のわたしは多発性硬化症なのかちょっとグレーゾーンにあり、ひとまずは免疫介在性脳炎との扱いを受けています。
一応は自己免疫疾患とのことですが、残念ながらわたしの抗体値は
いらないもので高く、重要なもので低く
という状態です。
コロナ前からマスク着用手洗いうがい必須だったよううに、未だ変わらず外界のものへの抗体値は低いです。
自分を攻撃する免疫だけははたらいてくれているようで。
妊娠に関わるといえば感染症・ウイルス系の抗体値を調べますが、わたしはそのうち
- 風疹で基準値の16倍未満
- サイトメガロウイルスで基準値の28倍以上
- カンジダ再発3回(現時点)
の項目でひっかかりました。
「赤ちゃんに風疹の抗体は引き継がれない」
「サイトメガロウイルス罹患が妊娠中でないか精密検査を」
「カンジダ何回やるの?」
と言われながら過ごしています。
カンジダに関しては発症時(5〜6年前)のステロイド大量投与からのお付き合いなので、免疫が下がる・ストレスが溜まると簡単に再発します。
どうやら1年半前から本格的に再発していたとのこと。
1年半前は、細菌検査をしましたが引っかからなかったときです。
という悲しみ。
カンジダは赤ちゃんにうつらない、ということだけが幸いです。
免疫力の低い方、自己免疫疾患の方は、どの免疫がどれほど弱いか調べてから妊娠した方がいいのかな、と思います。
免疫力なんて正直変動しますけど。
かわいいし産むのは変わらないけど
いろいろ語りながらも赤ちゃんはかわいいし、いろんな訓練も積んで少しは育児の見通しも立ったので産みたいのですが、
(赤ちゃんが生まれるってそもそも奇跡なので)
ハイリスクと言われたら、妊娠後期には自分が思った以上におおごとになる、と思った方がいいかなと、なんだかんだなんとかなると思っていたわたしからのメッセージです。
他に一般の妊産婦さんが気をつけるべきポイントもあるので、注意する点がとても多いです。
「何ができるの?」
「どうやってするの?」
などの言葉の攻撃、思いやりで味わう悔しさにも留意して、頑張ってほしいと思います。
楽しい生活が待っていることを願って。