発達と成長の定義
発達と成長の違い
- 発達:機能が伸びること
- 成長:大きさ(mass)が伸びること
行動主義心理学
ソ連前のロシアにおいてパブロフという消化腺の研究でノーベル賞を受賞した研究者の提唱した行動主義心理学における「古典的条件付け」という理論(通称:パブロフの犬)だが、ロシアで革命が起こり、レーニンを主とする「ソ連」が生まれ、それにアメリカが対抗して自由意志に基づいた「オペラント条件付け」という理論を生み出した。
現在はオペラント条件付けが、環境の違いなどがあっても同じような発達(四つ這い、歩く、など)の過程を辿ることを考えると、人間の発達を表していると考えられている。
古典的条件付け
- 無条件刺激では無条件反応(生理的反応)が起こる。
例)犬の前に餌を置くと唾液が出る。
- 条件刺激では条件反応(学習された反応)が起こる。
ex)犬に餌をやる時に、ベルを鳴らしてから餌を置くと、ベルを鳴らすだけで唾液を出すようになる。
- 2次条件刺激によって条件刺激は起こせる
ex)名前を呼ぶ→ベルを鳴らす→餌を置く
略語一覧
- 無条件刺激:US:Unconditioned Stimulus
- 無条件反応:UR:Unconditioned Response
- 条件刺激:CS:Conditioned Stimulus
- 条件反応:CR:Conditioned Response
古典的条件付けにおける強化、消去、般化、分化
- 強化:無条件刺激を反復して条件刺激と連合させること
- 二次強化:一次条件刺激による二次条件刺激の強化
- 消去:条件刺激のみを提示することで、学習させた条件反応を消すこと。
例)ベルを鳴らしても餌が出てこないようにして唾液が出なくなるようにする。
- 般化:類似した条件刺激でも条件反応が生じること。
例)ベルを鳴らして餌を与えていたら、ベルに似た音にも反応して唾液が出てくる。
- 分化:特定の条件刺激のみを強化することで、類似刺激への反応が消えること。
例)あるベルを鳴らしたときだけ餌を与えるようにして、他の似た音では餌を出さないようにして唾液が出ないようにする。
オペラント条件付け
ソ連に対抗して生まれた、とはいえ、「パブロフの説明では自由意志が存在しない」というまっとうな主張のもと作られた理論。
例)ある目的における行動パターンが二つある場合、成功した行動が強化されることで、次回以降のその目的において、成功した行動の生起率が上がる。
学習のReadinessについて
運動発達にはtrial and errorが重要ではあるが、それが全てではないとGesell A.は一卵性双生児での実験を元に批判した。
実験内容遺伝子が一緒の子(一卵性双生児)AとBにおいて、階段上りのスピードについて
- A:出生46週から52週までの6週間
- B:出生53週から56週までの2週間
と、学習期間、学習時期を変えてトレーニングを行った結果、
53週時点:Aが17秒、Bが45秒
かかったが、
56週時点:Aが11秒、Bが14秒
と、最終的にはほぼ同じ能力になった。
そこから、
すなわち、
と言われた。
立つ、歩くなど1歳までの発達的機能は学習によらず、学習のreadinessが重要である。
運動発達の原因
運動発達の原因にも、様々な説が唱えられた。
Neural-maturationist theories(神経成熟理論)
Gesell, Mcgrawの説 “Readiness”
という段階を経て、初めて運動発達するという理論。
これは以下の説、幼児の行動を元に提唱された。
- 神経成熟:Neural-Maturationでは
- 頭尾律:上→下の発達。脳からオリゴデンドロサイトが下りてきて、軸索が髄鞘化する。完全に髄鞘化するには2年かかると言われている。
- 経験/学習:Experience/ learningでは
- 古典的条件付け
- オペラント条件付け
- trial and error(試行錯誤)
また原始反射では、以下の図の通り↓
しかし、運動発達から中枢神経系への影響があること(うつ伏せとあお向けの実験)、自動歩行などの運動発達と言える反射消失が再び現れることから、神経成熟理論への批判が高まった。
うつ伏せとあお向けの実験
新生児を「うつ伏せ」もしくは「あお向け」で寝かせると
- 手支持座位
- 腹這い
- 四つ這い
- 立ち上がり
の開始時期に有意差が見られた。
うつ伏せに寝かせた方が開始が早くなった。
自動歩行
新生児期に見られる、赤ちゃんの足を地面につかせて胴体を支えると、足が動いて勝手に歩行を始める反射のこと。
成長とともに消失する。これは成長して筋肉/体重が減少することで説明される。しかし、水につけるなどして軽くしてやると、完全に消失したと診断された児童でも自動歩行が再び現れる。
- body(身体的)
- neural(神経的)
- cognitive(認知的)
なものがあり、神経成熟だけでは説明できないとされた。
神経細胞群選択説
刺激により応答を起こせた神経細胞群は生存し、応答を起こせない神経細胞群は淘汰されるという説
単純な連絡→ジェネラルムーブメント:これ邪魔されると、動くときの感覚と運動のフィードバックがない→DCDなどに発展する可能性がある
とりあえずどんと運動のレパートリーを広げておいて、状況に応じたものを強化しているのでは、と考えられている。
ジェネラルムーブメントについては→https://harukams-medicalbeauty.com/hr5/
発生選択と経験選択
- 発生選択:状況依存性のない運動の多様性(新生児が意味のなさそうな動きをする)により、シナプスの過剰投射を起こし、運動の多様性を生む
- 経験選択:Hebb則による強化で、状況に応じた運動の多様性を生む
動的システム理論
運動発達は神経成熟のみによって起こるのではなく、環境などのほかの要素も関与し、多くの運動に関連するシステムの自己組織化が運動を形成する過程(運動発達の過程)であるとする理論。