胎児
胎児の行動発達の変容
妊娠時期が進むに従って、胎児の全身運動は減少し、局所的で複雑な運動が増える。
これは脊髄中枢の広範囲な統合が必要になる。
運動の小部位化は中枢神経系の機能的分化や中枢神経の抑制機構の発達が関与していると考えられる。
子宮内のスペースが胎児の成長により相対的に狭くなるから、という理由もある。
原始反射が消失する理由
水中で浮力のある状態において、原始反射の一つである歩行反射が再び現れたり、歩行反射が出ている子の足に重りをつけたとき歩行反射が消失したという実験結果が存在する。
これらにより、原始反射消失には神経成熟以外の非線形的な要素(body,neural,cognitive)が関係していると考えられる。
乳幼児の体の大きさ、体重の増加により、筋力が相対的に弱まったために原始反射が消失したと考えられる。
自動歩行していると筋力増強ができるため歩行獲得は早くなる。
新生児の感覚の発達
受容器レベルでは出生直後からある程度完成している
五感について
- 味覚:生後2週間で甘い液を喜んで飲み、酸っぱいものに顔をしかめることができている
- 嗅覚:生後間もなく、不快なにおいから顔を背ける。母親のにおいと他の母親のにおいを嗅ぎ分けることができる
- 触覚:口唇刺激は非常に敏感である
- 視覚:奥行き知覚、凝視は生後間もなく発達し、7〜8週には充分な機能を有する
- 聴覚:出生6〜14時間で強い音に対する脳波の変化がある
その他に
- 乳児期の選好注視:新生児でもパターンを識別できる。生得的に人の顔を識別する能力を持つ
図柄を用いて注視時間を測定。出生48時間以内の乳幼児でも人の顔の図柄を注視する時間が長かった。
- 聴覚刺激における識別:母親の声と他の女性の声を区別できる
乳幼児の吸啜刺激を利用して、母親と、他の女性とで比較して吸啜回数を測定。母親以外では回数が減少。
- 感覚(視覚)と運動の協応:ミラーニューロンにより、模倣運動ができる。これにより、表情と感覚を一致させている(共感)
生後12日から21日の乳幼児に、口を開ける、舌を出す、口を尖らせる、などの行動をして見せると、模倣して同じ行動を示した。感覚と運動の協調は新生児期でも起こっている。
ソーンダイクの学習の3法則
- 効果の原則 :強化されたものが学習され、強化されなかったものは学習されない
- 反復の原則 :繰り返さないと学習しない
- Readinessの法則:準備されていないと学習されない
小児期の視野の変化
- 自己中心的視野(self centered):周りの景色が動いて自分は動いていないという感覚
- 外的参照に基づく視野(referenced):外にある環境が実際で、自分が動くことで視野が変わっていくと認識できるようになる
成長するにつれ、だっこなどで移動「させられる」から、ハイハイなどで移動「する」へと変わる。
「自分が動いた」ことにより「景色が連動して動く」経験をすることで、自分を中心に物が移動する感覚から、物が固定されていて自分が移動する感覚を学習する。
前頭部(運動)と後頭部(視覚)との関連を調べた実験によると、1~4、5~8週間ではコヒーレンスがあり、9週以降はコヒーレンスがなくなる。
コヒーレンスがある:ある性質が時間的に持続したり,空間的に保持されている状態(コトバンクより)
このような視野の変化が運動発達において重要である。