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発達障害系理学療法学vol.3〜脳性麻痺児〜

授業内容
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発達障害の定義

発達障害と脳性麻痺の定義

発達障害:生体の有する機能が成熟しないままにとどまった状態最もよく見られる発達障害は中枢神経系のものであり、脳性麻痺、精神発達遅滞も発達障害といえる。(医学大辞典 南山堂)
脳性麻痺受胎から新生児(生後4週以内)までの間に生じた、脳の非進行性病変に基づく、永続的なしかし変化しうる運動及び姿勢の異常。(厚労省脳性麻痺研究班 1968)
簡単に言うと、脳の障害による運動麻痺
全人口の中の脳性麻痺児は0.1%未満だが、日本での罹患率は高く、新生児障害の中では最多の障害。
脳性麻痺児では出生時の関節に問題はない
骨の成長に対して、痙性筋の成長は遅いことが関節変形を助長する。
骨と筋の成長の競争は骨格の成熟期に終わる。

 

脳性麻痺の分類

  • 痙直型(四肢麻痺、片麻痺、両麻痺):大脳の運動領(運動皮質)に損傷。皮質脊髄路の問題が生じる。筋が動かなくなることが問題。GMFCS1~4に多い。全体の7~8割。同側支配しか無理になる+静止膜電位が閾値に近づくことで、筋が興奮しやすい状態にある。
速度依存性の伸張反射亢進
ガストロがヒラメより硬いときはあんまり固くならない
  • アテトーゼ型:大脳の底部にある基底核に損傷。ジスキネジアで細かい動きが増えるが、全身の大きな動きは少なくなる。GMFCS4,5に多い(重症)。全体の2割弱。
正確にはジスキネジア。アテトーゼとは、意識していない運動が現れることだが、ジスキネジアの一部。
  • 失調型:小脳の損傷。失調が現れ、意図した運動がコントロールできない。

 

脳性麻痺の原因、危険因子

脳性麻痺の原因

出生前(約20~30%):染色体異常、遺伝性疾患、子宮内感染(トキソプラズマ、風疹)、胎生期の脳損傷(水銀中毒、一酸化炭素中毒)など

周産期(約70~80%):胎児仮死、新生児仮死、低酸素性・虚血性脳障害、核黄疸、頭蓋内出血など

生後:脳炎、髄膜炎、外傷など

両足悪いならPVLをまず考える。胎生25~30週が多い。

 

脳性麻痺の危険因子

出産前

  • 母体の体調不良や感染症
長期破水(前期破水、早期破水)、TORCH感染症(トキソプラズマ、風疹、サイトメガロウィルス、ヘルペスなど)、肝炎など
  • 母体の服薬
  • 母体の嗜好
喫煙、アルコール中毒、麻薬中毒など

 

周産期

  • 新生児適応
    • 生理学的適応:呼吸・循環の確立、体温調節、腎機能の発達
    • 生化学的適応:ビリルビン代謝の発達、血糖調節、Ca・Mgの調節
  • 低出生体重(死亡率も高い)
超早期で低体重児だと予後が悪いため、出生体重に加えて在胎週数も考慮する
在胎週数が短くなると新生児仮死の出現率も大きい
特に肺サーファクタントが分泌される25~30週の間での仮死出現率頻度は大きく変動する(19.4~28.4%)

APGERスコア

APGERスコア全部で10点、最後に足し算して10点なら問題なし。

生まれてから5分毎に見る。

生後まもなくで10点未満の場合、回復が早ければ問題ないが、時間がかかった場合には新生児の予後は悪いことが多い。

 

GMFCS

Gross Motor Function Classification System(粗大運動能力分類システム):脳性麻痺児の重症度分類

体幹のコントロールと歩行に重点を置いたシステムで、2歳までの運動発達の評価により、その後の運動機能を予測することができる。

レベル0~2歳2~4歳4~6歳6~12歳12~18歳
2歳までに

歩行可能

<屋内、屋外>

歩行可能

<屋内、屋外>

走行可能

<屋内、屋外>

歩行、走行、

跳躍可能

変化なし
座位保持四つ這い

歩行補助具歩行

<屋内>

歩行

(屋外は少し)

<屋内、屋外>

歩行可能

(杖不要、手で捕まって階段昇降)

車椅子使用の可能性もあり
腰を支えれば

座位保持可能

割り坐

四つ這い

(両足をそろえて膝をづりながら)

座位保持

歩行補助具歩行

<屋内、屋外>

歩行補助具を

使って歩行可能(杖多い)

<屋外>

車椅子

定頸座位保持<屋外>

車椅子自走可能

(屋内短距離歩行可能な場合あり)

電動車椅子
定頸不可<屋内、屋外>

車椅子

電動車椅子

 

6〜12歳が運動機能のピーク
2歳までに座位保持ができて、他に問題がなければ歩くことができるようになる
必ずレベルが変わらないわけではない
例)Ⅲ⇄Ⅳなど。Ⅲ→Ⅳに落ちることが多い
ただ、基本的に脳性麻痺分類では体幹を考えず分類していることが多い

 

周産期の神経学的疾患

  • 頭蓋内出血ICH;intracranial hemorrhage):極小未熟児では25%~50%に合併
  • 脳室周囲白質軟化症PVL;periventricular leukomalacia):側脳室周囲白質の局所的虚血性壊死。1500g未満児の30%~40%に認められる

出生時、脳の三角部は血管ができていないが栄養は与えなければならない。低酸素脳症等でこの部分が選択的に脱落することが原因。

 

脳性麻痺児のImpairment(障害)

脳性麻痺児のImpairmentは大きく2経路ある。

1つ目

中枢神経系の病理:出生時の脳損傷など(例:PVL)

下位運動ニューロン(LMN)への抑制の欠如

上位運動ニューロン(UMN)症候群陽性症状

一次運動障害
  • 痙性(spasticity)
  • 反射亢進(Hyperreflexia)
  • クローヌス(Clonus)
  • 同時収縮(Co-contraction)

筋骨格系の病理:二次運動障害

 

2つ目

中枢神経系の病理:出生時の脳損傷など(例:PVL)

下位運動ニューロン(LMN)への連絡路の欠如または他の伝達路の欠如

上位運動ニューロン(UMN)症候群陰性症状
一次運動障害
  • 衰弱(Weakness)
  • 易疲労性(Fatiguability)
  • 平衡感覚の弱さ(Poor balance)
  • 感覚鈍麻(Sensory deficient)

筋骨格系の病理:二次運動障害

 

筋骨格系の病理

筋短縮→骨のねじれ→関節の不安定性→変形性関節症

となり、二次運動障害として

  • 拘縮(Contracture)
  • 変形(Deformity)

が生じる。

筋緊張異常

筋緊張異常(過剰活動)には、筋活動によるものとして大きく3つの要因があるが、筋活動によらない要因もある。

筋活動による要因

  • 筋伸張による過活動
    • 安静時の相同性伸張
    • 安静時の緊張性伸張
    • 拮抗筋の同時収縮
  • 筋伸張によらない過活動
    • 共同運動・連合反応・不随意運動
    • 皮膚刺激・侵害刺激など
  • その他
    • 咳・あくびなど

 

筋活動によらない要因:コラーゲンの蓄積

コラーゲン:MASバランス能力に有意な相関、移動能力クローヌス選択的運動制御に影響を与える傾向有

痙性麻痺では、重症例ほど痙性筋の筋内膜にⅠ型コラーゲンが蓄積されていることがわかった。

これにより、筋短縮位での不動化が起こると不可逆変化のため元に戻らなくなる。また、筋の粘弾性(スティフネス)も増加する。

これは一番柔らかい関節に影響し股関節脱臼や側彎の悪化などを起こすため、予防のために姿勢監視やストレッチが重要となる。
特に成長期の関節変形の進行は早い
筋のサルコメア長の短縮筋スティフネスの増加で、細胞内外のタイチン(筋原線維の弾性たんぱく)やコラーゲンのような筋構成要素のリモデリングが生じる。

 

脳性麻痺の筋緊張

脳性麻痺の筋緊張を概略すると以下のようになる。

脳損傷

↓上位中枢の開放現象

痙性麻痺、異常姿勢での固定

↓コラーゲンの蓄積

筋の粘弾性の増加:筋繊維の短縮、硬化

 

脳性麻痺における筋力低下の理由

脳性麻痺における筋力低下の理由は、神経性と筋組織の特徴にある。

  • 発火頻度の低下低〜中等度出力までの運動単位の発火頻度は脳性麻痺児でも健常児でも同じだが、脳性麻痺児では高出力に必要な発火頻度が選択的に得られない
高閾値の運動単位の動因、低閾値の運動単位の発火頻度の増加が困難
  • 筋組成の特徴:脳性麻痺児ではMotor Unit Remodelingが生じ、タイプⅠ線維が優勢である。また、タイプⅠもしくはタイプⅡ線維の発育不全が起こる。

タイプⅡ(Fタイプ、速筋)線維が少ない

 

脳性麻痺児の筋力トレーニングの効果と運動機能

筋力トレーニングによって、脳性麻痺児も筋力は向上する。

しかし筋力増加が必ずしも機能改善につながるわけではない

 

筋力増加で機能改善する場合

  • その筋力増加が機能改善に必要な範囲での筋力増加だった場合

 

筋力増加で機能改善しない場合

  • もともとその機能に必要な筋力を持っていた場合
  • 筋力増加しても機能改善に必要な筋力に至らない場合
これらの場合は筋力増加が機能改善に結びつく見込みがないので、筋力トレーニングが本当に必要かは考えなければならない。

 

筋の成長と運動機能

筋力増加は必ずしも機能改善に結びつきはしないが、筋の低成長が生じれば運動機能に必要な筋力を得られない。すなわち、

学童期の筋力の低成長が運動機能の低下に繋がる可能性がある

 

筋力測定が可能な条件

脳性麻痺児で筋力測定が可能な条件

筋力測定はすべての脳性麻痺児で可能なわけではない
  • 「最大筋力」という指示が理解できること
乳幼児、精神発達遅滞児では困難
  • 「最大筋力」発揮に影響する問題がないこと
関節変形や顕著な可動域制限があると困難

→「最大筋力」課題を行わなくても筋を定量的に解析する指標が必要:GMFCS?

 

脳性麻痺児の運動機能と筋と体重の関係

筋組織の発育と加齢について、健常者では誕生から成人まで直線的に増加し、筋力課題と相関を示すが、

脳性麻痺児の体重の特徴として、中等度患者は筋力増加で体重が増加するが、重症患者は脂肪厚の増加で体重が増加する。

運動機能は体重と筋力の比という考え方が存在する。

脳性麻痺児が成長するにつれ、元々獲得していた運動機能を失う理由は、筋力増加が低いため、成長に伴い筋力と体重の比が必要量を下回ってしまうからと考えられる。

筋量は体水分量で測定
各筋厚の経年変化は、
単位年変化率=(AUC/year)/初年度の筋厚×100(%)
で求める。

 

 

脳性麻痺児のリハビリについて

脳性麻痺児のリハビリでの注意事項

  • 脳性麻痺児は健常者より得にシビアな課題特異性があるため、その人の生活に沿った動きで練習する必要がある。
  • 正しい動きをさせると補助量が多くなり、補助に頼ってしまい、筋活動量は少なくなるので効果的ではない。一方、自分でやらせることは、支えているように見えて補助が少ないので筋活動量が多く効果的である。
  • 日常生活の活動量が多いと筋力は向上するため、今できる運動機能はなるべく自分でやらせることが次年度も運動機能を維持することに重要である。
  • 運動機能の改善につながらなくても、拘縮や骨脆弱性といった悪い要素を防げるため、重症でも動くことが重要である。
骨強度の低下予防には立つ刺激を与えることが重要

 

脳性麻痺児のストレッチの効果

ストレッチ実施期間には対象筋は改善、介助量も減少したが、介入終了後には対象筋の短縮傾向を示したとい報告がある。

システマティックレビューでも、関節可動域、痙性麻痺はストレッチにより改善する可能性があり、ストレッチの方法は持続的なストレッチが徒手的なストレッチより効果的である可能性が高いと結論されている。

しかし現状十分な結果は得られておらず、決定的なことは言えない。

 

大人と子供の麻痺の違いと、新生児の脳性麻痺、片麻痺の原因

 

大人の脳損傷での麻痺のタイプ

 

子供の脳性麻痺での麻痺のタイプ

=片麻痺                 =両麻痺

脳性麻痺のほとんどの原因は脳血管障害といえる。ただし、血管が詰まるのではなく血管が脆弱なためおこる。

新生児の新生児片麻痺は、脳出血や脳梗塞と考えてあながち間違いではない。

 

Strength based approach

Strength based approach:短所をなくすことより、長所を伸ばすほうが利得が大きいため、長所を伸ばそうというアプローチ。

  • Normalizeを目指すアプローチ:正常と違う運動を少なくすることを目指す。
  • Strengthを伸ばすアプローチ:運動の仕方が典型発達児と異なっても、歩行機能を少しでも改善することを目指す。
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