はじめに
この講義では主に可動域とストレッチについて学習する。
同じ病気でも病態、症状が同じとは限らない。
その「障害」の「原因」を見つけるための講義。
テキスト:運動療法学
「原因を見つける」の例
「手が上がらない」→原因は大きく2つ
- 筋の拘縮などのROM制限
- 筋力がない
など
授業
ROM(Range of Motion)の制限因子の探し方
- ROM計って分析(P.189~190)
- Endfeel:検者の感じる最終域感(P.186)
ROMからの評価
例)背屈ROM悪い→筋なら底屈筋の短縮(伸長性がない)、筋以外なら骨性、皮膚、痛み…ext.
以下では、ROMからの評価、分析の練習例を示す。
例1)
足背屈他動ROMテスト | ||
膝屈曲位 | 膝伸展位 | |
Aさん | 35度 | -5度 |
Bさん | -5度 | -5度 |
→Aさん:2関節筋に問題がある。
→腓腹筋、足底筋の短縮の可能性(作用、足については底屈、回内)
→Bさん:2関節筋に問題はない。腓腹筋と足底筋のせいではない。
→筋なら2関節筋でない(膝に関係しない)底屈筋(ヒラメ筋、後脛骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋)
後脛骨筋→回内も悪い
長、短腓骨筋→回外も悪い
趾屈筋→趾伸展したら悪い
筋以外なら、骨の衝突、皮膚が引っ張られる、痛み、関節内運動など
例2)
股屈曲他動ROMテスト | ||
膝屈曲位 | 膝伸展位(SLR) | |
Aさん | 120度 | 45度 |
Bさん | 45度 | 45度 |
→Aさん:2関節筋ハムストリングス(大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋)に問題がある。
大腿二頭筋短頭は問題ないので注意
→ハムストストレッチすればいい
→Bさん:筋なら2関節筋でない(膝に関係のない)股関節伸展筋(大殿筋、中殿筋後部線維、小殿筋後部線維、大内転筋後部線維、梨状筋などハムスト以外の股関節伸展筋)
筋以外の要素はほぼ変わらないので省略
SLR:Straight Leg Rising
例3)
膝屈曲他動ROMテスト | ||
股屈曲位 | 股伸展位 | |
Aさん | 90度 | 90度 |
Bさん | 140度(ほぼ正常) | 90度 |
→Aさん:筋なら中間広筋、内側広筋、外側広筋
→Bさん:膝関節伸展作用と股関節の屈曲の作用のある2関節筋→大腿直筋(と理論的には大腿筋膜張筋)
例4)
膝伸展他動ROMテスト | →膝屈曲筋に問題があるかを調べてる | |
股屈曲位 | 股伸展位 | |
Aさん | -15度 | -15度 |
Bさん | -15度 | 0度 |
Cさん | 0度 | -15度 |
→Aさん:股関節に作用のない膝関節屈筋:膝窩筋、腓腹筋、大腿二頭筋短頭、腓腹筋、足底筋
→足部の底背屈を交えると更に候補を減らせる
→Bさん:膝関節屈曲股関節伸展作用をもつ2関節筋(大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋)に問題がある。
→Cさん:膝関節屈曲股関節屈曲作用をもつ2関節筋(縫工筋、薄筋)
→薄筋なら股外転悪い、縫工筋なら股内転悪い
Endfeel
例)
肩90度外転外旋(2ndER) | 線維がひきつれる、跳ね返る弾力のある感じ | 関節包伸長性 |
膝屈曲 | 筋腹同士が当たる | 軟部組織接触性 |
膝伸展 | 骨が当たる | 骨性 |
肘伸展 | 骨が当たる | 骨性 |
肘屈曲 | 筋腹同士が当たる | 軟部組織接触性 |
股90度屈曲内旋 | 線維がひきつれる、跳ね返る弾力のある感じ | 関節包伸長性 |
- SLRなどで最終域で急にやや固くなる:関節包伸長性
- 患者側は力を抜こうと思っているのに、なぜか力を入れてしまって、急に止まる:筋スパズム性
- 患者側の痛みの訴えや恐怖感で、もっといけそうなのにむり:無抵抗性
スポーツでのパフォーマンスが多い人はROM大きいひとが多いが、その分不安定性が増す
ROM制限因子については次回学習