みなさまこんにちは。
今回は「右脚全廃:脚としての機能を果たせない」と診断され普段は車椅子生活をおくる元医療学生のわたしが歩く必要のあるときにどう乗り切るか、つまり「どうやって歩くか」をご紹介します。
片麻痺などで片脚に不自由を感じている人の参考になれば幸いです。
前提
まずご理解いただきたいのですが、わたしが麻痺しているのは右脚だけではありません。
口から下すべてにおいて、突然動かなくなります。
ただ今回は説明上、片脚は比較的健康で、片脚が完全に動かないものとさせてください。
歩行に必要な筋肉は?
片脚が使えなくなったときに重要になるのは腹筋、中でも腹横筋と呼ばれるお腹から背中までの脇腹を覆う筋肉です。
歩き方
- 動くほうの脚を前に出す
- 腹横筋で骨盤を引き上げる
- 足裏が地面から浮いたタイミングで、勢いを利用して脚を前に進める
- また動くほうの脚を前に出す
これをひたすら繰り返します。
残念ながら動かないほうの脚で地面を蹴り出して勢いをつけることはできません。
また腹横筋が発達してくると動くほうの脚を追い抜いてしまうことがありますが、これでは次に、動かないほうの脚に体重を長時間かける必要が出てくるので大変危険です。
あくまで動かないほうの脚は、動くほうの脚よりも前に出ないように気をつけましょう。
こうしていると周りからは脚を多少引きずっているようには見えますが、一応歩いて移動ができます。
腹横筋を使う理由
腹横筋を使う理由はもちろん、脚の筋肉が使えないからです。
歩行で、特に足を前に進めるときには下腿三頭筋というふくらはぎの筋肉や、長母趾屈筋やら長趾屈筋やらの指先の筋肉で地面を踏みしめる必要があります。
しかしわたしたちはそれができません。
足を浮かせて振り子のように前へ進めるしかないのです。
一般的な歩行の筋肉
「一般的に歩行でよく使う筋肉は?」と聞いて「大腿四頭筋!」と思ったあなたはとても惜しいです。
もちろん大腿四頭筋も使います。
しかし厳密にいうならば、大腿四頭筋を構成する4つの筋肉の中では大腿直筋しか股関節をまたいでいません。
つまり他の筋肉は股関節の曲げ伸ばしには関係ないということです。
一般的な歩行の主動作筋
ちょっぴり専門的なお話になりますが、「主動作筋」という概念があります。
これは「この動作をするときにメインで動く筋肉」という意味です。
一般的な歩行の主動作筋は、大腿直筋と大腰筋です。
大腰筋は背骨、中でも腰椎の5番(L5)から小転子と呼ばれる大腿骨の突起へつながる筋肉です。
なぜ大腰筋ではなく腹横筋?
脚がたとえ全廃していようと、この大腰筋を使える人は歩行が不安定になるだけで一応歩けます。
ただこの大腰筋を使える人はめちゃくちゃ少ないのが現状です。
そのためここでは、より鍛えやすく早い効果が得られる筋肉として、大腰筋ではなく腹横筋での歩き方をご紹介しました。
大腰筋と腹横筋の歩き方の違い
大腰筋と腹横筋とでは、歩き方に目で見てわかるほどの大きな違いが生まれます。
大腰筋では?
大腰筋は背骨を軸にして片脚を引き上げることになり、骨盤はあまり上下動しません。
左右への動きも少なめです。
ただ相当な筋力とコツが必要です。
腹横筋では?
腹横筋はそもそも肋骨と骨盤とをつなぐ筋肉なので、脚には関係ありません。
骨盤を引き上げて、結果的に脚を引き上げる方法です。
そのため骨盤の上下動が大きく、慣れないうちはバランスを崩し左右に倒れることもあります。
腹斜筋ではない理由
少し筋肉に詳しい人であれば「腹斜筋も使えるのでは?」と思うかもしれません。
結論を言うと、使えます。
ただ腹横筋ほど効率よくありません。
その理由は筋肉の付き方にあります。
腹横筋の位置
腹横筋は肋骨の下部から骨盤までを埋めるように存在します。
そして骨盤の最上部へとつながるため、骨盤を引き上げるには非常に効率的です。
腹斜筋の位置
腹斜筋には内腹斜筋と外腹斜筋がありますが、どちらも肋骨下部から骨盤の前部の低めの位置、または腱へと斜めに走行しています。
同じ高さまで骨盤を引き上げるには、腹横筋よりも低い位置から筋肉を縮めなければいけません。
腹斜筋は使えるが効率的ではないと言う理由はここにあります。
ただ腹斜筋が使えないよりは使えるほうがよいのは間違いありません。
全廃しても歩ける
脚が全廃していても歩けるのは希望だと思っています。
わたしは右脚全廃宣告をされたとき、自分の脚に失望しました。
それでも知識を総動員して、腹筋を鍛えていれば歩けることに気がつきました。
腹横筋での歩き方では、腹横筋で動かないほうの脚を持ち上げている間にもう片方の脚がブレないよう、支える腹直筋の力が必要です。
また動かないほうの脚を抱える側の腹横筋を十分に縮めるために、反対側の腹横筋は十分に伸ばせる必要があります。
ストレッチと筋トレを積極的に行うことが歩くための鍵です。