まず、このページを開いてくださったみなさまに心より感謝申し上げます。
血漿交換とは何かについて関心をもってくださってありがとうございます。
このサイトには血漿交換について説明したページがたくさんありますが、この度すべて1か所にまとめさせていただくことにしました。
血漿交換にまつわる基本知識と、何度も経験して思うこと感じることなどをお伝えできればと思います。
血漿交換
よくわたしが「血の入れ替え」と表現する「血漿交換」ですが、厳密には「血」とも「入れ替え」とも違います。
血漿とは
そもそも血漿とは、血液の液体成分を指します。
血液は赤血球、白血球、血小板などの固体成分と、それ以外の液体成分にわかれます。
一般的に「血」というと赤い血液を想像するかと思いますが、赤いのは赤血球であり液体成分の血漿は赤くありません。
少し黄色みがかった透明なものです。
ここには様々なたんぱく質や抗体が溶け込んでいます。
血漿交換とは
血漿交換はまず体から血液を抜いて、その血液を固体成分と液体成分(血漿)とにわけ、血漿に溶け込んだ様々なたんぱく質や抗体などを濾過法や吸着法などにより取り除き、純粋な水分として生理食塩水と血漿分画製剤とともに体に戻す治療法です。
ただ「入れ替え」とわたしが表現するのには血液中の成分を除去して戻す以外の理由があります。
それが「血液分画製剤」と呼ばれる、献血の血液から作られる液体を補充する点です。
この補充は、生理食塩水だけで補充してしまうと血管内の血液濃度が下がり体の各部位から栄養分を血管内にかき集めてしまうので、それを防ぐために行われます。
大体は2L〜4Lほど血液をクリーニングし、除去した成分の分減った体重を元に戻せる量だけ生理食塩水と血液分画製剤を補充します。
血漿交換の順序
血漿交換をするにあたって、まず血を出し入れする用のカテーテルをセットしなければなりません。
これは首の内頚動脈、足のつけ根の鼠径動脈のどちらかが多いですが、足のつけ根だと排泄のときに汚染してしまう可能性があるので、ほとんどが首へのカテーテル挿入となります。

血漿交換の特異性
血漿交換がある意味で「最終手段」となる理由は、内科なのに侵潤的治療だからです。
外科医は手術をしますが、内科医は服薬調整に薬剤の点滴投与、放射線治療などを行い体を傷つけません。
しかし血漿交換ではチューブ2本を入れる大穴を開けますし、固定のために皮膚を縫います。
内科なのに外科的な治療を伴うところが他の治療と異なる点です。
カテーテル挿入を行う人は病院によって異なります。
麻酔科医が行うこともあれば、神経内科医が行うこともあります。
カテーテル挿入
カテーテルを挿入するときには、大体は処置室に運ばれます。
まず首を消毒、仰向けで顔を45度くらい左へ傾け、顔や首を覆うシートの上から右首へグサッといきます。
局所麻酔を打ち、そこから鉛筆のような形の器具を数十cm動脈へと差し込み、器具の先に開いた穴からワイヤーを入れていきます。
そこから何がどうなったのかはわかりませんが、いつの間にか血を引き出す用と戻す用の2本のチューブを入れられます。

そしてチューブを皮膚に固定するために、糸で2針程度縫います。
軽く縫って固定しているだけなので、強い力を入れると破けたりチューブへ血液が逆流したりします。
by首の痙攣で毎晩ベッドを血塗れにしたharuka(はるか)
ここで「○センチ固定」と言われますが、これは「この長さでなければチューブが引き出ていたり奥に入り過ぎたりしている」という意味です。
チューブを入れた後は、チューブの先が血管内に入っているか、心臓にかかっていないかなどをレントゲンで確認します。
ここまでやって準備完了です。

血漿交換そのもの
血漿交換は透析室で腎臓内科の先生の下で行われます。
まずベッドに乗った状態で体重を量られます。
そこから血圧計、酸素モニターを取り付けられます。
血圧は開始時と終了時の他に、15分ごとなど定期的に測られます。
首のチューブを機械に繋がれ、スタートです。
まず血を抜かれ、いらない成分を除去した後、生理食塩水や血漿分画製剤とともにクリーニングされた血液が戻されます。
2時間半~3時間程度で終わります。
この間はテレビを見ていても音楽を聴いていても、あまり動かなければ何をしていてもかまいません。
終了時に体重を量り、終わりです。
カテーテルを抜く
カテーテルを抜くのは非常に簡単で、糸を切ってチューブを抜き、しばらく傷口をぐっと押さえてからガーゼで覆います。
かなり短時間で処置は終了しますが、傷口が消えるのには個人差があります。
血液分画製剤
ここからは少し余談です。
使う血液分画製剤は、血漿交換ではアルブミンか新鮮凍結血漿(FFP)が多いです。
アルブミンは血中の主要なたんぱく質で、これを補充することである程度血液の濃度が保たれます。
FFPは献血から作った血漿そのもので、アルブミン以外のたんぱく質や抗体なども含みます。
「血漿交換」という単語で1番近いのはこのFFPですが、なにしろ補充する成分が多いため拒絶反応を起こすリスクがアルブミンよりも格段に上がります。
血漿分画製剤は複数人からの献血でできているため、ショックを起こした血漿分画製剤は「どの成分がショックの誘引となったか」を調べるために回収・分析されます。
治療として血漿から除去した成分は、研究目的に保存する病院もあれば廃棄する病気もあります。
血漿分画製剤には他にも様々なものがありますが、どれが使えるかは病名によります。
なので抜け道として、アルブミンでの血漿交換を行ったあとに、足りない成分を点滴で補充するということも行われます。
血漿交換の是非
血漿交換は、医師の中でも
- する方が良い派
- しない方が良い派
に分かれる治療法です。
これは、血漿交換で重篤な副作用を出した医師は血漿交換をためらい、一方で劇的に回復する患者を見てきた医師は血漿交換を勧めるからです。
特に多発性硬化症などの自己免疫疾患にはステロイドパルスなどの非侵潤的な治療法もありますから、免疫力も下げ傷口からの感染症リスクもあり重篤な副作用の可能性もある血漿交換をあえて進んでしたいと思う方は、医師にも患者にもいないかと思います。
以上が血漿交換についての概要及び何度も受けてみての感想です。
ご覧くださってありがとうございました。
参考;理学療法神経学、患者用説明書、脳神経内科医の話。感想は本人の体験より