高齢者の筋力増強
- Frontera(1988):高齢者であっても高強度の筋力トレーニングにより筋肥大を伴う筋力増強が可能であることが示された。
- Fiatarone(1990):90歳代の施設高齢者に筋力トレーニングを8週間した結果、筋力が約2倍に、筋横断面積が11%増大、移動能力も向上。
高齢者のトレーニングに対する適応能力は若年者と同程度。
ただし、トレーニングにより生じる疲労からの回復が遅く、期待した効果を得るまでに時間がかかる。
- 高齢者の筋力増強メカニズム:筋肥大
神経的要因で主動作筋↑、拮抗筋↓ とすることが大切
→低強度でも筋力増強効果大
トレーニング理論
過負荷の法則
トレーニング効果を得るためには、日常生活の負荷よりも大きい負荷を必要とする。
オーバートレーニングにならないよう休息を取ること
休息の長さは、能力が退行しない程度におさめること
トレーニングの漸進性
筋力が向上してゆけば、さらに過負荷となるよう、徐々に負荷を増やす。
要因は
- 運動強度↑
- 運動頻度↑
- 回数↑
- 休息時間↓
- 新しい環境に移す
など
トレーニングの特異性
ある種の能力は同様の運動を用いたときに効果的に高められる。
運動要素として
- 関節角度
- 動作様式
- 収縮様式
- 収縮速度
などがある
バリエーションの法則
同じ方法を続けていると、長期間に渡っての効果は得られにくい。
一定期間ごとにトレーニングの内容を変えることが重要
サイズの原理
- 弱い張力発揮:タイプI(遅筋)
- 強い張力発揮:タイプII(速筋)
トレーニング強度・頻度
参考:Borgスケール
体力水準の低い高齢者に体力アップ目的:Borg自覚的運動強度「ややきつい」
1RMの60~80%(8~15RM)
RM:repetition maximam
筋肥大が目的:Borg「きつい」~「とてもきつい」
- 運動頻度:
- 高強度:2~3日/週。48時間以上の休息
- 低強度:高頻度の方が効果大
トレーニングの留意点!
- 体力の個人差が大きい
- 疲労は後にくる
- 環境の変化に適応しにくい
- 継続が大切
- ウォーミングアップ・クーリングダウンを十分に
高齢者の筋力トレーニングによる効果
コクランシステマティックレビューによるエビデンス↓
- 筋力増強:◎
- 転倒防止:△
在宅高齢者の筋力トレーニング:×、複合トレーニング:○
- ADL向上:△
在宅高齢者の筋力トレーニング:×、複合トレーニング:○
- 動作速度向上(歩行・立ち上がり):○
- 全身持久力向上:○
- バランス力向上:×
- 骨強度向上:△
- 腰椎:○、大腿骨:×
- OAの痛み低減:○
それ以外の痛み低減:×
- QOL向上:×
※コクランシステマティックレビューについて→http://www.lifescience.co.jp/yk/jpt_online/cochrane/index_cochrane2.html
高齢者に対する全身持久力トレーニング
アメリカスポーツ医学会(ACSM)・アメリカ心臓学会(AHA)による高齢者の持久力トレーニングの処方
- 運動強度
非常に軽い<50
軽い<50〜63
中<64〜76
高<77〜93
※最大心拍数(220-年齢)で決定
例)70歳:心拍数100〜120、70歳:心拍数120〜140
- 運動頻度
中等度:5日以上/週、30分以上
高等度:3日以上/週、20分以上
- 運動時間
最低10分間連続した運動
低強度:30分以上
高強度:20分以上
高齢者に対するバランストレーニング
- BOSの減少:開脚→閉脚→タンデム→片脚
- 重心移動:リーチ動作(BOS固定)、ステップ(BOS移動)
- 外乱刺激への対処:骨壁、肩甲骨へのpush
- 視覚、固有感覚、前庭系入力の減少:開眼→閉眼、支持面を床→マット、ボール使用などex.
- その他:横歩き、障害物歩行、二重課題バランストレーニング
高齢者に対する筋パワー・敏捷性トレーニング
- 筋パワートレーニング:中等度負荷で高速度トレーニングが効果的
例)自重を用いてすばやく立ち上がり、段差昇
- 敏捷性トレーニング:
- トレーニング特異性により素早い動作を←高齢者向き
- タイプII(速筋)を鍛えて素早い動作を:高強度筋力トレーニング