「苦しいときには髪が伸び、楽をすると爪が伸びる」という意味の四字熟語「苦髪楽爪」。
爪が伸びていると「楽してる」と言われたことはないでしょうか。
わたしはあります。
ただわたしはたしかに最近爪の伸びるスピードが早いけれど、めちゃくちゃ苦労していた全身不随時代にも伸びていたなあと思うのです。
そして思春期辺りの成長期には、あまり伸びていなかったなあと思うのです。
この辺りの体験から、現代において「苦髪楽爪」が当てはまるのかどうかを考えていきます。
昔の「苦髪楽爪」
恐らく「苦髪楽爪」という言葉が生まれたのは、肉体労働が労働とされる時代です。
少なくともパソコンでの仕事が労働の時代ではありません。
主食のない食事
「髪が伸びる」というのは、相当ミネラルを摂ったということが考えられます。
それが苦労の証なのだとしたら、それは「米や芋が食べられるほど裕福ではなく、野菜や海藻ばかり食べていた」という意味になるのではないでしょうか。
髪の毛の主成分はケラチンなどのたんぱく質にコラーゲンなどの食物繊維です。
これらは魚類や海藻によく含まれています。
買い手のつかない小さな魚や海藻を食べて、米の食べられない飢えをしのいでいたのだとしたら、「髪が伸びるのは苦労の証」も「髪が伸びるのは貧乏で苦労した証」として納得できます。
爪がけずれる労働
料理をしていて爪を切ってしまった!というのは極端な例としても、畑仕事や洗濯のゴシゴシ手洗いなどは爪をけずる要因です。
たくさん働いていると爪は自然と研磨されて伸びないのでしょう。
現代の「苦髪楽爪」
では現代において「苦髪楽爪」は成り立つのでしょうか。
ちなみにわたしは成り立たないと考えています。
その理由はやはり栄養面と労働形態の変化です。
栄養の偏った食事
飽食の時代と呼ばれる中、食べるものはたくさんあり選びたい放題です。
かくいうわたしも――摂食障害の治療中というのもありますが――かなりの偏食です。
ところで、厚生労働省が発表している1日の食事バランスガイドはご存知でしょうか。
下の図の、コマみたいなやつです↓
こんなにバランスよく食事できている人っています?
わたしたちには食べたいものを選んで食べる権利があります。
その結果、ファーストフードやお菓子に流れることもしばしば…
少なくとも「主食の米や芋が食べられないから海藻類を食べて空腹をまぎらわせる」時代ではなくなりました。
貧しい人は働く時間の確保のためカップラーメンを食べるなど、海藻など体に良いとされるものが高くなっている時代です。
貧しい人ほど炭水化物ばかり食べる時代で、髪が伸びるためのミネラルなど摂れるはずがありません。
労働形態の変化
今や農業などの第一次産業に携わる人は少なくなりました。
ほとんどの人がサービス業などの第三次産業で働いています。
また紙の業務よりもパソコン業務が増え、キーボードを打つことが増えました。
ところで爪は指先の防御を担っています。
指と爪の間に針などが入って「痛っ!」となった人は多いことでしょう。
そんなことにならないために、指先に刺激があると爪は伸びます。
洗濯などでシワ伸ばしに使うのは指の腹。
米を研ぐときには爪も一緒にけずれていく。
けれどわたしたちは毎日のようにタイピングして、毎日のように指先へと刺激を与える。
労働が肉体労働からパソコンやタブレットを使った頭脳労働に変化するにつれ、キーボードで仕事をする人ほど爪が伸びやすくなっているのです。
体験談
ここで最初に挙げていた「最近爪が伸びやすい」という話に戻ります。
これは最近、ほぼ毎日パソコンを打っているからでしょう。
全身不随のときも伸びていたのはただの新陳代謝です。
手がまったく動かず、けずれる要素がなかったから伸びていたのでしょう。
成長期に伸びていなかったのは家事を全部していたからで、習い事の格闘技でけずれていたせいもあるでしょう。
グローブをはめて殴り合い(乱捕)という部門があったので、その練習で週3回ボコボコになっていました。
ただキーボードを打つのは爪が折れるほどの刺激ではありません。
爪が伸びるのにちょうどよい刺激です。
楽はしていません。
ただパソコンで仕事をしているだけです。
「苦髪楽爪」は古い!
「苦髪楽爪って言うし、爪がこれだけ伸びる自分は楽しているように見えるのかな…」
たまにわたしすら心配になるのですが、これらはすべて栄養面と労働形態の時代変化で説明がつくものだと考えます。
つまり、苦髪楽爪は古い!
今の時代に合わせていうのであれば、「苦爪楽髪」になるのではないでしょうか。
ただここまで語ってきて何ですが、外見でその人の苦労を推し量ろうなどとはしたくないなと思っています。
人の苦労は目に見えません。
それを忘れないでほしいなと思います。