知人がテレビ出演とのことで、ビデオ撮影&録画しながら見ていました。
本当にがんばってインタビューに応えてくださって、めちゃくちゃありがたかったです。
ただ見ていて思ったのは、
特定の難病患者の「声」を取り上げただけでもっと根深い問題には一切触れないテレビ側の怠惰にイライラしました。
わたしは、苦しんでいる側が声を上げなければならない現実が、とても嫌だ
多発性硬化症=手足がしびれる難病じゃない!
YouTube以外の動画埋め込みができないので写真として切り取りました。
探せば動画版はあるでしょう。
公式チャンネルか不明なのでリンクは控えます。
ただ音声付きで観たとき、相当に腹が立ちました。

多発性硬化症は、手足がしびれる難病です。
違います。
ナレーション、違います。
その程度で難病扱いされませんよ現実。

多発性硬化症は、神経を守る細胞を自ら破壊してしまう難病です。
簡略化するならこうなります。
オリゴデンドロサイトへの自己抗体で神経表面の膜を削り、炎症の程度によっては剥き出しになった神経も傷つく、なんていうのは、退院直後に教科書出典で必死に作ったページにも載せています。
手足のしびれは軽症患者にも共通する症状なだけです。
精神症状もありますし、損傷した神経の部位によっては全身不随にもなります。

ってか、なりました。
損傷しにくい部位ですが、それでも場所によっては呼吸停止だってします。

しました。
現状は進行を遅らせる?と期待されている薬を飲むしかなく、症状への治療しかなく、根本的な治療がない。
その治療ですらアナフィラキシーショックで死ぬ可能性すらある。

全身水疱だらけ、昏睡状態、そんなリスクを負って「ただ症状を鎮めるための」治療をするんですよ。
首にチューブ1か月挿しっぱなしにするんですよ。
血液が毎晩逆流してもやるんです。
そんな覚悟ありますか?
治療前に遺書を書いた記録すら残っていました。
記憶障害も進行しているので、まったく覚えていませんでした。

だから難病なんです。
なのにテレビは、ピアニストのサラ・オットーさんが多発性硬化症を告白したときと同じように、

多発性硬化症は、手足がしびれる難病です。
だからそれだけじゃないんですって。
いい加減他の症状も調べましょうよ。
これは「わかりやすい」症状のひとつです。
でもそれだけじゃないんです。
悪化するのはしびれだけじゃないんです。

わたしは今悪化して目がどんどん見えなくなっています。
痙攣も酷くなっています。
同病さんからも「痙攣で苦しい」ってコメントやLINEもらうんです。
しびれだけじゃないんです。

本当に難病を軽視したがるのはやめてほしいですね…
多発性硬化症患者が全員「就職可能」?
この番組は「健常者に見える難病患者の就職や労働について」がテーマ、のようでした。
なので働いている多発性硬化症患者さんへインタビューされたのかなと。
まあ重度で寝たきりのときに取材は受けたくないですし、問題は少し別物になりますからね。
同じ「社会からの隔絶」に悩んでいるにしても、悩みの方向というか……
どちらも経験していますが、そのときに悩んでいることの種類は微妙に違うんですよね。
ただわたしは「多発性硬化症は手足がしびれる難病です」とテレビで紹介すると、

僕、多発性硬化症なんです
と言ったときに

ああ、あの手足がしびれるだけの(笑)
と思われないか、とても不安になりました。
全員が全員、そこまで動けるわけじゃないんです。
わたしのリアルでの同病の友人は歩けない人のほうが多いんです。

もうこれは「テレビの説明不足への」不信感でしかありません。
「多発性硬化症は大変な病気」と認識してくれると嬉しいです。
難病で働く難しさ
わたしも多発性硬化症で右半分が見えなくなり「お客さん全員に挨拶していない」と指摘されバイトを、やめようか考えていたところで全身不随になったのでやめました。
難病で働くことは、とても難しいです。
「難病でも働いている」と思われていることすら苦痛だと、きっちり記録にも残していました。
たしかにわたしの同病知人も、働いている人は全員事務職です。
それ以外は専業主婦・専業主夫です。
難病で働くって、とても難しいです。
わたしも大学すら中退していますし。
わたしは「もう歩けないだろう」と診断された段階でパソコンでできる仕事を探した結果ライターを始めましたが、

そしてどうも向いていない理由までわかったのでもうやめますが
難病で働くことって、本当に難しいです。
だって
相手は「難病患者を雇う」なんて想像したこともないから
契約したのに難病を明かした瞬間に切ってきた企業の数は、もう覚えていません。

同じ雇うなら健常者のほうがいいですよね、わかります。
そんな社会、問題ですよね。
もっと深い問題がありますが。
周囲の圧倒的な理解不足
こういう人がいてくれるのはとても支えになります。
ただみなさま、
10年間で約500人
これ、多いと思います?少ないと思います?
ちなみにこの特集は「難病患者:95万人」の音声付きスライドからスタートしました。
圧倒的な企業側の理解不足
重症で働けない患者が半分以上いると考えても、わたしは「10年間で約500人」は少なすぎると思いました。
この人の支援が悪いのではありません。
ただ採用しない企業側の問題です。
「難病手帳」の誤解
直近のわたしの例だと一時契約の雇用主から言われたことです。

紫乃さんって、難病だったら手当とかあるでしょ?
ありません。
日本にそんな「難病給付金」みたいな優しい制度はありません。
よくいう「難病手帳」は「難病の治療に関する医療費負担を軽減してくれるもの」であって、障害者手帳で障害年金もらうのとは全然違います。
多発性硬化症だと専門薬(疾患修飾薬といいます)3割負担でも月平均25万円かかります。
(たかが再発を遅らせるだけの薬のくせに)
わたしが今試している新薬は、正直その比ではありません。
上限医療費制度でごまかしても何十万円とかかっている現状。
難病って、
- 自分でローンも組めないし
- 保険にも難病者用も保険枠で条件クリアしないと入れないし
- まともに働けないし
- 「給付金あるだろ」なんて誤解しかされないし
- 医療費だけがえぐ高い
障害者手帳は「障害年金もらえるから」みたいなツイートもよく見かけますし、それならそれで良いんでしょうが、
難病にはかからないに越したことはないです。
良いこと、あんまりありません。

わたしは「難病にかからなかったら今の自分はなかった」と思っていますが、友人は今のところ全員が、罹患数十年でもよく「かからなければ良かった」「どうして自分が」と話しています。
当然ですよね、デメリットは多いですから。
「サポートしてもらえるようがんばれ」?
わたしはとても疑問に思います。
「闘病で体力消耗しているのに、これ以上がんばらないといけませんか?」
【問題の本質】理解されても配慮はされない
就職するまでは「周りに理解されないこと」が問題になります。
でもいざ就職すると、
「難病患者だ」って「理解してはくれて」も「配慮はされない」
これが大問題なんです。
配慮されるために「がんばれ」
休んでいる人がいたら、代わりに誰かがサポートしますよね。健常者でも。
どうして難病者が休んだら、他の人よりも休む頻度が高かったら、
「サポートされるようにがんばれ」
なんですかね?
いや、この方のアドバイスは決して間違っていません。
むしろ正しいです。
そう「がんばらないと」就職というか、まともに契約すら取れません。
わたしの疑問は「企業・社会」に対してです。
「病気が原因で人よりがんばれない難病患者が、どうして人よりがんばらないと就職すらできないのか?」
多発性硬化症に限っていえば、ストレスで再発するリスクが高まる病気です。
がんばりすぎは再発を招き、通院や入院による欠勤を招く病気です。
なのに、どうして?
難病にかかる可能性なんて誰もがもっているのに、そこまで冷遇しなくてもいいじゃないですか。
自分が難病にかかったときに待ち受けている現実がそんなのだったら、嫌だと思いませんか?
わたしも実際にかかってみて

ここまでの扱いを受けるのか!
と知ったのであまり偉そうにはいえませんが、
もしこのページをご覧になって「この社会やばいな」と感じてくださる方がいるのなら、社会を変えてとか大それたことは言わないので、
せめて身近な難病者への接し方を考えてほしいです。
けっこうみんな、「生きるのにがんばって」ます。
「見た目は健常者と変わらない」との話は通院記録のついでにしたことがあります。
車椅子や杖などがない限り、「持病の可能性」は一切考えてもらえません。
ヘルプマークを見てわざわざぶつかってくる輩もいます。
だからもうそこは「察してくれ」とか難しいことは言わないので、もう本当に、
わたしが願うのは、病人も健常者も等しく「人間」として扱われること、ただその一点です。
新薬の副作用で熱に浮かされながら書いているので不適切な部分もあったかと存じますが、ご覧くださりありがとうございました。
気が変わって「露出したことを後悔している」など思われましたらいつでもおっしゃってください。