はじめに
なぜか受けてしまった院生の授業内容もついでに、面白かったのでまとめておきます。
授業内容
関節軟骨の構造
表面からコラーゲンが横→まばら→縦に並ぶ。
コラーゲンの縦線維の根元が石灰化軟骨、そこから骨になる。
軟骨は血液に触れると骨になる
石灰化軟骨で剥がれやすく、ここで剥がれるのが軟骨損傷
表面から傷んでいき、最終的に骨が露出してしまうのが変形性関節症(OA)
関節軟骨には軟骨細胞が元々少なく、再生しにくいという特徴がある上、表面のコラーゲンが剥がれると、水分とともに細胞も流出してしまい、再生できなくなる
コラーゲンの構造
コラーゲン線維は3重鎖でできている。
その1鎖にはさらに、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、それを繋げるたんぱく質が付いている。これがプロテオグリカン。
よくいうCMの「プロテオグリカンが大事」は誤りで、関節軟骨にはプロテオグリカン、ヒアルロン酸、コラーゲン全て重要。
プロテオグリカンはコンドロイチン硫酸やケラタン硫酸の隙間に水分を溜め込むため、保水性が高い。
これらの硫酸が付いていない、疎な部分は、炎症性サイトカインが再生のための破壊で切断してしまう。
こうして切断された小さなパーツは分子量が少ないため血管内に入ってしまう。こうしたもの(関節ねずみ)が滑膜に触れると、さらに炎症性サイトカインが分泌されてプロテオグリカンの破壊が進む悪循環が生じる。
OAは再生回復が破壊に間に合わない状態
分子量が大きいと、まばらに分布したコラーゲンに絡まって外へ出ていかないので、滑膜を保てる。
横線維のコラーゲンの表面から飛び出たプロテオグリカンに水分(関節液)が吸い付き、潤滑が良くなる
関節軟骨の機能
- 滑らか=潤滑
- 弾力性有り、骨より柔らかい=衝撃吸収・分散
- 関節腔(スペース)を作る=骨と骨の擦れ合いをなくす
関節軟骨の代謝
- 筋や骨と違い血液供給がない=関節液(滑液)による代謝(栄養を運んでくれる)
関節液はコンドロイチン硫酸がくっつけてくれる
- 荷重や運動によって、表面だけでなく軟骨の奥層まで関節液が流入
スポンジに水を吸い込ませるようなイメージ
ただし奥まで完全に入れ替わりはしない
関節軟骨の組成
- 80%が水分
- 残り20%がコラーゲン、プロテオグリカン、軟骨細胞など
関節軟骨損傷と変形性関節症
高齢者が増えると変形性関節症患者数は増加する
参考:厚労省データ
若年者には関節軟骨損傷が多く見られる
原因:スポーツ外傷など。膝関節と足関節が多い。
関節軟骨損傷を放置すると変形性関節症になり、手術が行われることもある。
正常関節軟骨をgrade0として、1,2,3,4と重症になる。
変形性関節症
股関節、膝関節、足関節など、荷重関節によく見られるが、特に膝関節に多い。
grade1ではすでに硬度指標が低下している。
grade1にならないよう予防すること、grade2に進行しないよう維持することが重要
関節軟骨変性が進むと(軟骨が悪くなると)コラーゲンが少なくなり、軟骨の硬さ指標は低下する可能性がある。
関節軟骨損傷
手術としては、マイクロフラクチャー法、培養軟骨細胞移植法、モザイクプラスティー法などがある。
マイクロフラクチャーでは、術後2か月間はCPMによる他動運動を中心にして荷重も制限するなど慎重に進める
培養軟骨細胞移植法では、軟骨でも荷重のかからない膝上部から細胞を採取して培養し、損傷した部分に移植する
モザイクプラスティー:自家骨軟骨円柱による移植法なので信頼性がある。自分の軟骨を円柱状にカットして、損傷部に埋め込む
術後3か月以内は、ドナー部位の膝蓋大腿関節部への過剰な負荷を避ける。腫脹や疼痛をきたさない範囲で術後リハビリテーションは段階的に進める。