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愚かな僕たちは、救いを求めて天を仰ぐ

気ままライフ
ブログ連載短編小説第1巻。これは病気を抱えながらも天に希望を探す、ぼくたちの物語。

どうして僕たちは空を見上げるのだろう。

そこにはただ青く青い天が広がっているだけなのに――

それでも僕たちは、ただただ空を仰ぐ。

 

~第1話~

 

大学受験。

未だ学歴社会なこの国で、命とも呼べるほど重要なもの。

ぼくは大学受験に落ちた。浪人生。

未だ学歴社会なこの国で、クズほどの価値もない人以下のもの。

そんなクズはコンビニの袋片手に家路を、気分転換に遠回りで辿っている途中。

 

クズながら、少し言い訳させてほしい。

 

ぼくは、家から通える距離にある国公立大学という親からの言いつけを守って受験した。

ぼくの住む範囲からは国内1、2を争う大学しかなかったから、必死に勉強した。

そしてセンター試験2日目、病気にかかった。

 

ウイルス性髄膜炎。

 

耐え難い全身の痛みが昼夜絶えず襲い、睡眠もままならないまま2週間が過ぎた。

そして頭痛が治まり勉強を始めようと思った頃には、本試2週間前。

 

字が読めなくなっていた。

 

日本語はもちろん、数式も英語も、あらゆる文字と記号の羅列に頭痛を催し、失神した。

そこから巻き返し、あと1歩のところまで頑張った。それを認めてほしい。

 

なんて、本当に言い訳だ。

結果が出なければ意味がない。

 

だからこうして、ぼくが毎日親から罵倒される日々を送ることだって仕方のないことなんだ。

 

「クズだってカラスの餌になるのに、お前はクズ以下だ。」

 

確かにな、と自分でも思ってしまう。

ゴミ置き場でビニール袋を突付いていたカラスはぼくの持ってきた新しい「餌」に歓喜しているようだ。

不気味ながらもよく通る鳴き声で仲間を呼ぶと、家の前に出された2重のゴミ袋を、協力して鋭い嘴で破り始める。

 

「やらないぞ」と、買ったばかりの食糧を、ぼくは奴らをにらみつけて守り抜いた。

 

ぼくはもう、以前と同じようにはできない。

所謂「後遺症」。

高熱の期間が長かったために、ゼリー状の飲み物と食べ物の間みたいなもので栄養を摂る。固形物は飲み込めない。

 

左眼は完全に失明した。見えていると思ったのは、右眼のおかげだったらしい。

片眼になったせいで、よく距離感を間違える。「立体視」とはよく言ったもんだ。

 

それでも平面は読めるから、まだまだ勉強を続けている。

ただそれはもう、「勉強したいから」というよりも「勉強させられているから」だろう。

 

学歴社会なこの世界の強者になって、親に楽をさせてやれと、親が言う。それが妙な病気にかかって入院までさせてやった親への感謝の表し方だと。

 

なるほどな、と納得したフリをして、ぼくは溜飲を無理やり下げる。

 

これが世の中の子供の宿命なのだろうか。

老後の親の面倒をみるために産まれてくるのだろうか。

 

――ひとが何の為に産まれてくるのか、なんて哲学的なことを考えたいわけじゃないんだけどな。

 

ぼくは天を仰ぐ。

自嘲に顔を歪ませて天を仰ぐ。

憎らしいほど青く澄み渡って人並みの扱いを受ける生物のたくさんいる空を、首が痛くなるまで見上げ続ける。

 

それはあまりに澄み切っていて、いっそ憎々しいほどに清々しかった。

 

第2話↓

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まぁるいせかい管理人
haruka(はるか)

多発性硬化症+名前も研究中の希少難病などを併発した23歳女子。京大医学部中退。仕事は小説家とライターとカウンセラーと極秘。
今の夢はお嫁さんと福祉用具開発プロジェクトの成功☆
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