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「最底辺の仕事」と評されたあのとき、保育士試験の結果待ちだった

社会論

「底辺の仕事ランキング」が発表された当時、わたしは保育士試験の結果を待っていました。

「最底辺の仕事」に挙げられたのは、介護士や土木作業員、保育士など、現場に携わる職業ばかり。

今回はなかでも保育士について語りたいと思います。

 

保育園へ勤める保育士には、さすがに今のわたしの体ではなれなくても、

保育士の仕事は保育園で働くだけではないのでどこかの分野で働ければと思って資格を取りました。

将来子育てに役立つし、と思っていた部分もあります。

まさかこれほど早いとは思っていませんでしたが……→難病もちで障害者だけど妊娠しました。障害児かも。でも産みます。

 

保育士の試験にはどんな科目が含まれるか?

保育士になるには、専門学校へ行くか、認可学校で基準単位を取得して保育士一般試験を受けるかの2通りがあります。

わたしは専門学校へは行っていないものの、大学時代に最低限基準の「一般教養64単位以上」を取得していたので一般試験を受験しました。

一般試験には9科目あり、赤ちゃんから幼児までの成長・発達過程や、子供のかかりやすい病気や障害、

そして特に、法律と過去の偉人とその人が提唱した教育理論についてテストされます。

 

正直、子供好きであれば成長や発達、病気などはけっこうすぐ覚えられるかと思います。

ただ法律については、

『文章』

上記の文言は誰に何年に提唱されたか?

のような、ぶっちゃけ現場の保育士さんが「役に立ったことない」と口をそろえるものまで含まれます。

  • 「保育園」というシステムの成立
  • 幼稚園との違い
  • 小学校の連携
  • どの法律では何歳までが「子供」に該当するか
  • 子供の入居する施設にはどんな職業の人を何人配置する義務があるか

などを覚えないといけないため、保育園を管轄する厚労省のことはもちろん、

文科省の宣言や中央答申、明治天皇以前の教育勅令や、教育に代わる働きをしていた宗教、私塾について、

また子供に関する国際条約や国際宣言も覚えなければいけません。

それに最近の試験ではSDGsに絡めて「外務省」からの出題もありました。

厚労省、文科省、内閣発足前の制度、国際条約に加えて外務省まで。

どこまでが保育士に求められるのか……それも実践では使わない知識を。

 

一度合格すれば2~3年は「合格科目の受験免除」があるものの、9科目すべてを同時合格する必要があるため、1科目でも落とせば再受験になります。

特に「ニコイチ」と呼ばれる科目は「2科目同時合格しなければ2科目とも再受験」という鬼モードを発揮しています。

わたしもこの「ニコイチ」のうち1つを落としたので再受験が必要でした。

9科目筆記で合格して初めて、保育士業務に関連しそうな実技試験が受けられます。

(ここで実技に落ちれば、また再受験が必要です)

保育士になるって、関係ない人が思う分には簡単に見えそうですが、めちゃくちゃハードル高いです。

 

資格試験の受験料を含めた諸々が高い

保育士連盟ってよほどお金がないのか何なのか、とにかく何かにつけてお金がかかります。

公式テキストは連盟でしか販売しておらず、医学書に次ぐ値段です。

一般のテキストも安いとはいえませんし、一部天才を除いて、1冊で合格できるようなものでもありません。

受験料は1万円を軽く超え、願書を書くための「要綱」を取り寄せるにも7千円強かかります。

また合格か不合格かの判定は遅いため、大体は前期後期ある試験の要綱申し込み期限が結果発表前にあります。

よほどの自信がなければ「前期試験の結果待ち中だけど後期試験の要綱を取り寄せる」ことになり、費用がかさみます。

私立大学の入学金支払い期限のようなものに感じました。

多くの私立大学の入学金支払い期限は国公立大学の合格発表当日午前までか前日までです。返金はどちらも、もちろんありません。

 

合格しても保育士として働くには「保育士証」が必須と法改正されたため、保育士証の申請にもまた費用がかかります。

これらの費用は郵便局窓口でしか支払えないので、郵便局の空いている時間に何度も通わないといけません。

これだけをして、ようやく保育士として働けるようになります。

これだけをして保育士になったのに、「底辺」というのはさすがに……。

 

どんなランキング名だったら納得できたのか

「底辺の仕事ランキング」と言われると傷つく人もいますし、反発する人もいます。

その職業を目指さなくなる人だっているかもしれません。

それに記事自体に書かれていた内容は、

  • クレームが多い
  • 重労働
  • 低賃金

などでした。

 

強いワードをタイトルにしたほうが読者も増えるというのは、さすがにライターをしていれば存じています。

ただあまりにも商売っ気に寄りすぎたよなと。

内容も挙げられていた職業も踏まえて、たぶん納得がいったのは

「労働や責任の重さのわりに賃金が低い職業ランキング」

ではないでしょうか。

記事タイトルとしてのインパクトは落ちますが、こう言われたらその業種に現在就いている人も「わかる」としか言えない気がします。

「底辺」よりも傷つく人は少なかったのではないでしょうか?

「賃金が低い」と書かれれば企業側も「そう認識されてるんだ、給料見直そう」の姿勢に、多少はなったかもしれません。

少なくとも「底辺の仕事」と書かれるよりは賃金アップする気が起きますよね。

「底辺の仕事」なら「底辺だから給料も安くていいよね」とか考えそうですし。

 

関係ないんだから人の仕事にランク付けるのはやめようよ

命や安全に関わる職業ばかりが「重労働で低賃金だから」と見下される時代になったら、本気でその業界の人っていなくなります。

目指す人もいなくなります。

保育士の資格取得だけですらここまで大変だったのに、現場で働けばもっと大変です。

それはボランティアとして、よく見てきました。

見ていただけで大変なのに、それを関係ない「Webライター」の業種が横からごちゃごちゃ言ってもなあ、という感じです。

 

昔下の子が「命を救う医者が一番えらい」と言ったときに説教したことがあります。

「じゃあパイロットは?一度に大人数の命背負って飛んでるのはえらくないの?」

それで納得してくれましたが、わたしはもともとこうして職業にランクなんて付けるものではないと思っています。

命を預かるからえらいとか言い出したら、土木などでインフラ整備してる人も大人数の生活を背負って仕事しているわけですし、どれがえらいとかの問題ではなくなります。

ライターだって、内容は異なりますが誰かの謎を解消したり娯楽を提供したりして、人生の充実に役立っているわけですし。

確かに「給料」とか「業績」とか、数字で明確なものはたくさんあります。

でもだからといって職業自体に優劣をつけるのはまた別問題だと思うのです。

職業で人の優劣を決めることにもなりそうですし。

職業で人の価値を判断する人が出てくるのが、一番怖いなと思っています。

あの記事はすぐさま削除されましたが、今後もあんな記事は二度と出てほしくないなと切実に思います。

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まぁるいせかい管理人
はるか

考察家。作家。開発者。多発性硬化症+希少難病+先天性心臓奇形などをもつ障害者。病歴や薬歴は多すぎるので管理者情報参照。今までにないものを創るお仕事。京大医学部を病気により中退。ケアストレスカウンセラー、保育士などの資格をもつ。

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