Kinetics
Kinetics;運動力学の話
人体にかかる力は4つの合力で決まる。その4つとは
- 重力
- 慣性力
- 重力の反作用力
- 摩擦力
である。また、重力の反作用力と摩擦力の合力を床反力という。
重力と慣性力は身体重心点(COG;Center of Gravity)を中心に働き、
重力の反作用力と摩擦力は足圧中心点(COP;Center of Pressure)を中心に働くと考える。
また、重心位置と支持基底面(BOS;Base of Support)は関係しない。
力と運動
重力も慣性力との合力で斜めを向く。
→床反力と、重力と慣性力との合力で偶力が生じる
偶力によって回転するのが人間の動き全般であり、慣性力と摩擦力で前後の回転力が決まる。
ジャンプして着地した瞬間には、重力よりも大きな力が床反力として返ってくる。摩擦力の式:f=μNのNを大きくできるので、摩擦力が大きくなり、このときに人を押すと、摩擦力の反作用力で、普段よりも強い力で人を押せる。この原理を利用したものが、中国の拳法にある。
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略語一覧
COG;身体重心点
COP;足圧中心点
ZMP(zero moment point):COGの、慣性力と重力との合力の延長上にある、床への投影点
BOS;支持基底面
GC;歩行周期
歩行について
歩行については、様々な理論が提唱されてきた。
基本用語
まず基本用語を忘れないようにメモしておく。
歩行周期↓
歩行理論
歩行の理論については多くの議論がなされ、主としては
歩行の6決定因子理論→倒立振子理論→動歩行理論
との変遷を辿った。
歩行の6決定因子理論(Six Determinants of Gait Theory)
局所の運動(Key Determinants of Gait;骨盤の回旋、傾斜、側方移動、立脚期の膝の屈曲、膝の運動、足部の運動)を原因として、全体の運動という結果が生じるというもの。
全体の運動には2通りあり、
である。
異常歩行では局所の運動が原因で全体の異常が生じていると考える。
倒立振子理論(Inverted Pendurum Theoty)
全体の運動(Exchange of Kinetic Energies;力学的エネルギーの変換)を原因として、局所の運動に結果が現れるというもの。
ここで局所の運動の問題とされるのは、股関節の運動、膝関節の運動、足部の運動であり、
異常歩行では、全体の運動を原因とみなす。
ただし倒立歩行理論では、
などから、少し違うんじゃ?となった。
実際の歩行では、「摩擦」が生じるため、エネルギーの一部は失われる。
動歩行理論
倒立振子理論を拡張したもので、COGの移動や摩擦も含めて考えられた理論。
倒立振子理論で問題となった、「設置時に失われたエネルギーをどう補っているのか」について、COGとCOPのバランスを考えて示された理論で、「push-off時に力を加えている」、
特に、
とした。
また、
ものとした。
Push-off時の力が力学的エネルギーの損失を補い、
接地時の摩擦力と、Push-off時の力との2力の合力が、両脚立脚期にCOGをぽんっと押し上げ、更に、運動の方向を決定する。