はじめに
まず何の疾患のリハビリでも共通することですが、血液検査の結果のAlb(アルブミン)を見て、基準値を満たしているかを確認する必要があります。
これは、Albが栄養状態を示す指標であり、Albが低いと、いくらトレーニングをしても筋にならない、筋を使えないためです。
また、WBC、CRPの値を確認して、感染症の有無を確認しましょう。
脊髄損傷の理学療法
脊髄損傷のリハビリは、脳卒中などのリハビリとは根本的に異なります。なぜかというと、
脳卒中などの麻痺:健常と比較して、ない機能や足りない機能の向上を図る
脊髄損傷の麻痺:損傷レベル以下の機能が全てなくなるため、残存機能に合ったADLの獲得を図る
ことになるためです。
また、脊髄損傷の麻痺では座位をとれるかどうかが重要な問題となります。
もし座位が不安定であれば、不安定な土台の上で作業するという「新しい機能」を獲得しなければいけないことになります。
急性期から行う理学療法としては、ポジショニング、呼吸練習、関節可動域練習、筋再教育練習があり、少し落ち着いてくると、座位バランス練習、ADL練習を始めます。
解剖
脊髄の解剖は細かくは神経系理学療法学の他の回でまとめますが、ざっくりと覚えるのであればC→T→L→Sの順に並んでいることを覚えておきます。
すると、
錐体路では内から外へ
脊髄視床路では前から後ろへ
後索では前から後ろへ
この順に神経が通ることがわかります。
患者さんの症状から、どこの損傷かをおおまかにで良いので見抜けるようにしておきましょう。
脊髄損傷の随伴症状(大なり小なりあり、ある意味で避けられない症状)
- 損傷レベル以下の運動・知覚麻痺
- 膀胱直腸障害
- 自律神経障害
損傷がT5、T6より上であれば交感神経が傷つきやすいため、起立性低血圧、体温調節機能低下もしくはできない、自律神経過緊張反射(トイレに行きたいはずなのに本人は気づかず、血圧が一気に200くらいまで上がって脳出血を起こす、など)が生じやすい
- 呼吸障害
- 体温調節機能の低下(麻痺部は汗をかかないため、産熱>放熱となる)
たしかにわたしが右半身完全麻痺だったとき、右半身には汗をかかなかったわ…
脊髄損傷の合併症(予防すれば防げるもの)
- 褥瘡(局所的な虚血で生じるため)
- 拘縮
- 深部静脈血栓(下肢に多い)
- 肺塞栓症(血栓が飛び、肺で詰まれば)
- 骨萎縮(体重をかけていないために骨が退化する)
- 異所性骨化(股関節や膝関節に多い。乱暴なROMトレーニングを行った場合に多い)
脊髄損傷の原因
内因性
- 変性疾患(加齢によるものが多い)
- 腫瘍(脊髄や近くの骨にできるもの)
- 脊椎疾患
など…
外因性
構造的に弱いCで最多
- 交通事故・転落
過伸展でC3・4、過屈曲でC4・5が多い
C5~7や、胸椎移行部であるT11~L2はROMが大きく不安定なので多い
- 転倒(高齢者で多い)
上部T損傷は胸腔内臓器損傷を伴うことが多い
- スポーツ
- 自殺企図
脚の骨折を伴ったLの損傷が多い(足から飛び降りるため)
PTが診るのは脳卒中や整形疾患がほとんどだが、脊髄損傷について知っておくことも必要である。
脊髄損傷を診られる病院は限られているため、そういった病院に配属されない限り、診ることはあまりないのが現実。