はじめに
このページを、わたしの応援してやまないひとりの女の子へ捧げます。
小児医療一般論
小児医療で最も大切なことは、その子が成長していくことを踏まえて、成長を阻害しないよう、また正常な成長ができるよう促すことにあります。
そしてその中で重要なのが、「栄養、愛情、遊び、勉強・学習」などのトータルケアを考慮することです。
また、最近の傾向としては急性感染症が減少、軽症化した代わりに、
先天異常、慢性疾患、悪性腫瘍が増加している傾向があります。
厚労省「母子保健の主な統計1997」より
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth8.html
新生児が重篤な病気にかかっていないか、日本では新生児全員を検査することになっています。
これを「新生児マススクリーニング」と呼び、対象となる疾患は
- フェニルケトン尿症
- メープルシロップ尿症
- ホモシスチン尿症
- ガラクトース血症
- クレチン症
- 先天性副腎過形成
の6つがメインでしたが、2014-2015年頃から、「タンデムマス法」の導入により、対象疾患は上記6つを含んだ19+αにまで拡大されています。
母子手帳
母子健康手帳には「便色モデル」「一般的な発達過程」「検診時期」「検診での質問内容」などの記載があります。
きちんと保管、活用することが大切です。
小児外科でよくある疾患
頭頸部
甲状舌管/正中頚嚢胞
<治療>
sistrunk手術:嚢腫、瘻孔、舌骨の部分切除を含めた甲状舌管の全摘
胸部
肺分画症
正常の気管支と関係のない無機能の肺組織があり、体循環より異常動脈の流入が見られる
<治療>
肺の葉ごとの切除
横隔膜ヘルニア
横隔膜が完全に塞がらず、腹腔内臓器が入り込む。発生率は左:右=4:1。これは右の穴を肝臓が塞いで気づきにくいためと考えられる。
<治療>
穴を塞ぐ
<注意>
ヘルニアの治療は簡単だが、肺組織の低形成など、人工呼吸器ののち自発呼吸ができるようになるかなど、肺の発達度を見なければならない。
上部消化管
先天性食道閉鎖症
先天性奇形の1種。食道と胃のドッキング不全。
<症状>
- 胃管のcoil-up sign
- 泡沫状唾液の流出
肥厚性幽門狭窄症
胃の幽門筋、主に輪状筋の肥厚により幽門管が狭小化し、胃の内容物の通過障害をきたす。
<症状>
- 生後2~3週間頃に発症し、オリーブ様腫瘍を触れる。
- 噴水様嘔吐
<治療>
- Ramstedt手術:肥厚した輪状筋を切り開く。20-30分で終わる。
- アトロピン療法:合併症などで手術ができない小児に試す。2-3週間かかる。
下部消化管
急性虫垂炎
小児急性疾患で最も一般的であり、全年齢で多発する。
<症状>
- 右下腹部痛(McBurney圧痛点:へそと腰骨を結んだ線の腰側3分の1のところ)
- 発熱
- 嘔吐
- Blunberg徴候(圧痛点を圧迫しているときより解除したときの方が痛みが増強する反跳痛)
<病型>
- カタル性
- 蜂巣炎性
- 壊疽性
<治療>
虫垂切除術(開腹・腹腔鏡)
腸重積症
腸管が肛門側の腸管に引き込まれる結果、腸閉塞や血流障害をきたす病態。なぜか男児に多い。離乳食を試す生後6ヶ月から24ヶ月に好発。
<症状>
- 粘血便
- 間欠的涕泣(腸がはまり込んだときだけ泣き叫ぶ)
- 腹部にソーセージ様腫瘍(腸がはまり込んだところ)
- Dance徴候(はまり込んで腸がなくなった部分の腹部が凹む)
<治療>
- 100-120cmの静水圧でのX線透視下高圧浣腸(水圧で引き込まれた腸を押し出す)
- Hanchinton手技(開腹し、肛門側へと、はまり込んだ腸をゆっくりと押し出す)
悪性腫瘍
神経芽腫
副腎髄質ならびに交感神経節に発生。年間150-200例(大部分は5歳以下)
<予後>5年生存率
- 低リスク群で95%以上
- 高リスク群で 30-40%と高い
肝芽腫
肝小児悪性腫瘍の大部分を占める。年間40-50例(大部分が4歳以下)
<症状>
腹部腫瘤
<予後>5年生存率
肝外転移がなければ90%前後
腎芽腫(ウイルムス腫瘍)
副腎髄質並びに交感神経節に発生する腫瘍。年間80-100例(大部分は5歳以下)
<症状>
腹部腫瘤
<予後>5年生存率
80%前後(組織型によって異なる)
仙骨部奇形腫
仙骨部に発生する胚細胞腫瘍。年間20-30例(新生児期に診断される)
<手術>
尾骨を切除することが必須。
残した場合再発率40%。
<予後>5年生存率
- 大半は良性腫瘍。
- 悪性腫瘍でも化学療法により85%
以上、小児医療一般論の概説と、小児外科で特に多い、または重要な疾患を述べてきました。
これらの疾患は本当にごく一部です。
本当に医療を必要とする子供たちはたくさんいます。
これらの子供たちが救われることを祈るとともに、
わたしの応援してやまない貴女が救われることを、心より祈ります。
参考:小児医療、小児外科授業資料及び標準小児外科学