広告
広告

前略、巽を苗字にしてしまった君へ

分類したくない

前略

君が彼の苗字を「巽」にしてしまったから、彼の下の名前が「巽」だと勘違いした人やその軌道修正に走らされた人や、わたしのように彼を「巽・アレックス」なんてハーフにしようとする人まで出てしまったね。

わたしと君との合作が紙で発売されるかもと、とても喜んで報告してくれたね。

まだわたしがYouTubeの動画の存在を知らなかった頃の話。

来年、再来年になれば一緒に見れたんじゃないかと思っているよ。

それこそ「彼」と「私」の物語のように。

手紙だとこんな風にひねくれてしまうのは、わたしの癖かな、なんて、わたしだけが君をばかにする特権を持っていると思ってるよ。

 

だってわたしは大概「生き急ぎすぎ」って言われるけれど、死んだ君と違ってまだ生きているからね。

 

なんて冗談はそろそろやめます。

 

わたしはその人を、姉さんと呼んでいた――かはさておき、皮肉にもメルカリで「こころ」が売れた今日、あなたの訃報を知りました。

あなたの返信に返信できるまでわたしの体調が回復する間に、あなたは亡くなっていた。

 

あなたとは、まだしたかった話がたくさんあります。

あなたのハマっていた高遠先生訳のプルーストは、まだ1巻を76%しか読めていません。

感想を言い合って解釈を教えてもらって……ってしたかった。

インスタの高身長女子ファッションの続編をとても楽しみにしていたのに、かわいい顔(かんばせ)のあとどうも更新がないし。

この10月のステキブンゲイで初めて同じ賞に応募、するはずでした。

わたしが筆という名のパソコン・スマホを触れなくなっている間に、あなたも触れなくなってしまっていたんだね。

あなたの今後作を読めない、いつか修正して公開すると言っていた過去作も読めない。

それがとても悲しいです。

 

添削――との名目で少し過去をお話ししてくれましたね。

わたしの小説は自分の境遇そっくりだと言ってくれましたね。

 

両親との折り合いのつけ方は、話し合ってみたかったです。

 

あなただからしてみたかった、どうでもいい話もあります。

 

残酷な天使のテーゼの「テーゼ」は名前なのかドイツ語の「These:命題」なのか、あなたの意見を聞いてみたかった。

窓辺から飛び立つのだから名前っぽいけれど、それすら暗喩で「命題がなくなってしまう人生の残酷さ」を指すのか、なんて深読みしすぎっぽい話も聞いてほしかった。

 

良い人ほどすぐに死んでしまう。

神様が周りに置きたいのだという。

だったら神様は神様同士で「良い人デッキ」みたいなのを作ってバトルしているのかな、なんて不謹慎だけどどうでもいい、けれど真剣な話もしてみたかった。

 

「あれ」がもし出版されたら、一緒に本屋に行って「これ800字縛りで向こうの要望もけっこうあるからきついんだよね」みたいな裏話をして笑いたかった。

 

わたしの添削を受けてから校正士の資格を取り始めたあなたがとても愛おしかった。

 

以前相方さんから「あなたがわたしのことをとても楽しそうに話す」と聞いたとき、わたしはとても誇らしかった。

あなたの横に立てる自分でいたいと思った。

あなたはわたしを過大評価してとても褒めてくれたけれど、本当にすごいのはいつもあなたで、わたしはあなたの背中を追っていました。

 

あなたはわたしを「親友」と呼んでくれましたが、わたしにとってあなたは親友で、憧れで、大好きで、可愛くて、どうしても他人とは思えないような、長女として育ったわたしに初めてできた、素敵なお姉さんでした。

 

クラブハウスは招待してくださったのにわたしがアンドロイド端末なせいで時間がかかって――いる間に聞けなくなってしまった。

すべてのツールが停止してしまった。

 

今日は彼に、あなたの写真を見せて自慢してきました。

「ぶー」「なんなんなんなんなん」「いややー」

赤ちゃんみたいな駄々をこねるセリフまでありったけ吐いてきました。

 

「死者は生者の幸せを願っているだなんて、生者のご都合解釈でしかないよね」

今となっては盛大なブーメランでもあるそんな内容も、話してみたかった。

 

あなたはどう考えていましたか?

 

あなたの口から答えを聞けない今となっては、わたしはただ、あなたに届くようわたしの考えを述べることしかできない。

 

わたしは、生者こそ死者の幸せを願って然るべきだと思う。

手の届かない存在だもの。

恨みつらみを抱えて自分が苦しくなるようでは、心底馬鹿馬鹿しいよね。

 

あなたがわたしのすべての人格、その性別を認めてくれたように、あなたのすべての人格が幸せであるよう

常に眠いと言っていたあなたがよく眠れるよう

ただ願うばかりです。

 

最近はとても、主に脳内が忙しくて、執筆のすべてが止まっていました。

ステキブンゲイ応募もやめようかと思っていたところです。

 

でもやめるのをやめます。

ねえ、わたし、占星術?的には文才と音楽才に秀でているそうだよ。

今回の応募作はあなたに捧げて書きます。

 

太宰に似ていると称されるわたしの筆ではあなたの代わりはとても務まらないし、そもそもあなたの知識とわたしの知識は違いすぎる。

あなたからメッセージでわからなかった日本語を調べようと保存して、まだ調べきれていません。

それくらい、あなたはとても、優秀という言葉ではおさまらないくらいの人だった。

 

自宅公開して大丈夫かなとかデルタ株大丈夫かなとかいう次元じゃなかったね。

いつも伝えていたけれど、そしてあなたも伝えてくれていたけれど、

今でも想って、想い続けています。

出逢ってくれてありがとう。

いつまでも大好きです。

 

今日の午前中ずっと全身黒コーデで喪に服してみたけれどどうにも足りなそうなので、

これからしばらくは、まだ読めていないあなたの日記を読んで過ごします。

 

輪廻転生があれば、いずれまた出会えんことを。

 

まあぼくは輪廻から外れたいのだけど、それは今回置いておくね笑

それじゃ、また。

 

楽しかったぜ、兄さんも、姉さんも。

ありがとな。

紫乃家より。

草々

広告
タイトルとURLをコピーしました