うつ病は心の風邪と言われるように、誰でもかかり得るし甘く見ていれば命に関わるということはけっこう有名かと思います。
しかし「なぜうつ病になるのか」と問えば
というとんでもなく的外れな回答や
という曖昧な回答が多いのではないでしょうか。
なのでここでは神経学的に見たうつ病の原因についてお話ししていこうと思います。
動画↓
自律神経
うつ病は自律神経ととても深い関係があるといわれています。
ということで、まずは自律神経のお話をさせてください。
交感神経と副交感神経
自律神経とは、交感神経と副交感神経という2種類の神経を合わせた、神経のグループの呼び方です。
「自律」という字からもわかるように、「自ずと律する」つまりわたしたちが意識しなくても勝手に働いてくれる神経を指します。
さてこの交感神経と副交感神経それぞれについてもお話しします。
交感神経
一般的に「とうそう(闘争・逃走)」の神経と呼ばれるものです。
闘うためや逃げるための神経なので、血管収縮や脈拍数の増加、消化機能低下などの働きをします。
興奮しているときには交感神経が働いている、と考えてください。
副交感神経
リラックスしたときには副交感神経が優位になっているというのは有名でしょう。
くつろいだとき、焦らなくていいときに働いているのが副交感神経です。
副交感神経には血管を拡張して血圧を下げ、睡眠に誘う働きや、消化を促進する働きがあります。
通常はこの2つの神経が交互に優位になることで、人間は活動と休息という基本的な生活を送っています。
それが壊れるのが、うつ病です。
うつ病の原因
うつ病にかかる前、あなたはどんな生活をしていましたか?
人間関係で切迫していたり悩んでいたり、仕事に追い詰められていたり、何かと精神的に窮地に立たされていたのではないでしょうか。
精神的に窮地に立たされたときに働く人間の心理は、その問題から「逃げる」か「必死に向き合う」かの2通りです。
つまり、逃走か闘争。交感神経の出番です。
逃げたり向き合ったりするために必死に考えている間は、脳は休まることがありません。
常に交感神経が優位となってしまい、副交感神経の出番はなくなっていきます。
そして常に交感神経が優位になった反動として、常に副交感神経が優位となる時間がやってきます。
これがうつ病です。
副交感神経の出す神経伝達物質は「抑制性」です。
脳がいくら「動け」という指令を出したとしても、副交感神経が優位の間は「動けという指令を抑えるように」働きます。
これがうつ病になると動けなくなる理由です。
単なる怠けや倦怠感によるものではなく、神経学的に見て動けなくなるのは当然なのです。
また副交感神経が優位になると心拍数が低下するなど、血流が悪くなります。
脳への血流が悪くなる、特にうつ病患者では前頭葉への血流が低下することは様々な論文で裏付けられていますが、脳だけではなく全身の血流も悪くなっているのです。
副交感神経が優位になり過ぎた結果から、リラックスの行き過ぎによる倦怠感や体の動かなさが生まれ、血行不良により思考停止や多くの身体症状が出てきます。
これがうつ病という精神疾患で身体症状が出る理由です。
まとめ
実は神経学には免疫学も密接に関わっているので、ここで説明した以外の体調不良の原因もあります。
なのでうつ病で身体症状が出る原因については、また書かせていただこうと思っています。
とりあえずはうつ病で動けなくて自分を責めているお仲間さんに「自分を責めないで」と伝えたくて書きました。
それではまた、サイトや動画、SNSでお会いできればと思います。
参考:下記及び医中誌掲載論文