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だれかを憎まなければ生きられなかった人に刺さる「八日目の蝉」レビュー

レビュー

わたしがちょうど高校の修学旅行であわや飛行機墜落というとき、映画「八日目の蝉」の主題歌「Dear」が流れていたのを鮮明に覚えています。

飛行機が激しく揺れテーブルのコーヒーが床までこぼれ、非常用ランプが真っ赤に点灯してCAさんが走り回るなかで、この感動的な歌に包まれながら事故死するのではないかと思いました。

それからおよそ10年。

「観たい」と思っていた割には時間がかかりましたが、「今」観て良かったと感じたし涙が止まらなかったので、おすすめの意味も込めてネタバレしすぎない程度に感想を書きたいと思います。

「八日目の蝉」あらすじと配役

あらすじ

今日まで母親だと思っていた人は、自分を誘拐した犯人だった。21年前に起こったある誘拐事件―。不実な男を愛し、子を宿すが、母となることが叶わない絶望の中で、男と妻の間に生まれた赤ん坊を連れ去った女、野々宮希和子と、その誘拐犯に愛情一杯に4年間育てられた女、秋山恵理菜。実の両親の元に戻っても、「ふつう」の生活は望めず、心を閉ざしたまま成長した恵理菜は、ある日自分が妊娠していることに気づく。相手は、希和子と同じ、家庭を持つ男だった。封印していた過去と向き合い、かつて希和子と暮らした小豆島へと向かった恵理菜が見つけた衝撃の真実。そして、恵理菜の下した決断とは…?(Amazon説明文より)

配役と登場人物説明

  • 主人公「松本恵理菜(薫)」:井上真央:4歳まで誘拐され、母だと思っていた誘拐犯の希和子から愛情を注がれて育った。4歳まで「薫」と呼ばれていた。希和子が捕まり家に帰されるも、実母との溝が埋まらずひとり暮らしをしている。不倫相手の子を妊娠してしまい、母親になれるか迷いつつも4歳まで過ごした小豆島を訪れ、ある決意をする。
  • 誘拐犯「野々宮希和子」:永作博美:不倫相手である恵理菜の実父・秋山丈博との子を中絶し、子供が産めなくなってしまう。せめて妻との子である「恵理菜」を一目見ようとしたところ、思わず誘拐してしまう。
  • 実母「松本恵津子」:森口瑤子:かなりヒステリック。丈博と希和子の関係は知っており、あらゆる手段で別れるよう迫っていた。恵理菜に愛情はもっているものの、空回りしてばかりいる。
  • 実父「松本丈博」:田中哲司:恵津子と結婚しているが希和子と不倫していた。希和子との子ができるものの「いつかちゃんとする」として中絶を促す。恵津子との間に恵理菜が産まれるものの、「男」として生きてきたので「父親」が似合わない。
説明はざっくりとわたしの主観でまとめたものです。

「八日目の蝉」基本的な背景

「ものすっごい重い映画」と言われることもあるように、映画「八日目の蝉」自体はけっしてギャグ映画を観る感覚で楽しめるものではありません。

いたるところに絶望が流れていて、常にその一歩スレスレの希望に縋っている感じです。

原作小説から入ったなら、最後まで読めなかっただろう自信すらあります。

ただ主題としては「祈り」なのかなと。

「祈り」というとわたしは「オーデュボンの祈り」という伊坂幸太郎さんの作品が大好きなのですが、あれは死後に託す未来への祈りというか……生きている相手の幸せをただただ祈る「八日目の蝉」とは毛色が少しちがいます。

「八日目の蝉」はみんな相手が好きで、みんな相手の幸せを願っている、ただそこに困難がつきまとうだけの……とても幸福で哀しい愛の物語です。

「普通」が羨ましいけど「普通」じゃない

誘拐犯・希和子は両親はじめ世間に大バッシングを受けるのですが、不思議とだれも憎んでいません。

ただ実母の恵津子は希和子を目の敵にしています。当然といえば当然。

主人公の恵理菜はというと、実母と同じく希和子を憎んでいる口ぶりです。

ただ実家と距離を置いていることから、実の両親へも懐いていない様子。

親も恵理菜への接し方がわからず、怒鳴ったりヒステリーを起こしたりと様々。

そうやって家庭崩壊の一途をたどった秋山家で育った恵理菜は「ふつう」の家族に憧れのようなものを抱いています。

自分が「ふつう」でないのは希和子のせいだ、と自己暗示のように繰り返し言います。

だれかを憎まなければ生きられないこともある

「憎しみや悲しみを手放せば楽になれる」

とはよく言いますが、だれだって好きでだれかを憎んでいるわけではないでしょう。

だれかを憎むのにも体力や気力がいるし。

でもだれかを憎まないと、自分がこんな状況にあるのはだれかのせいだって思わないと、生きられないことはあります。

直近数年、振り返ってみればわたしはそうして生きてきました。

  • 自分が病気になったのは上司のリストラのせいだ
  • 自分が病気になったのは「お前の過去が悪い」って言ってくる宗教のせいだ
  • 自分が障害をもっていても大変なのは虐待する母のせいだ
  • 自分が今経済的に困っているのは父のせいだ

そうやって何かのせい・だれかのせいにしないと、わたしは生きてこられなかった。

好きでいたかったし親を純粋に慕う子供のままでいたかったけど、そうしたらのしかかってくる現実の苦痛に耐えられなかった。

でも先日、母に昔作っていた手編みのネックウォーマーをあげて、母を愛していた昔の自分を認めた瞬間、やっとこの先の未来を生きていけるような気がしました。

好きでだれかを憎んでいる人は、きっといません。

羨ましい妬ましいはあるだろうけど。

ですがだれかを憎まないと、憎しみを糧にしないと生きていけない現実は、たくさんあると思うのです。

カウンセラーとしてはまた少し違う意見ですが、私見としては、他人への憎しみがときに生きがいになることは否定しません

「普通」じゃない方が幸せなこともあるかもしれない

「八日目の蝉」のタイトルの意味がわかった瞬間に鳥肌が立ちました。

ネタバレを含むのでご注意ください

「蝉(セミ)」が7日間しか生きられないというのはとても有名な話です。

「何年も地中にいるのに7日間しか生きられないなんてかわいそうじゃない?」という問いに、序盤で恵理菜は「みんなそうだから寂しくない。むしろ8日生きる蝉がいたら周りにだれもいなくてかわいそう」と答えます。

これ「7日生きる蝉=「普通」の家庭に育った人たち」だと考えるととても理解しやすくて、「8日生きる蝉=「普通じゃない」家庭に育った人」だと考えると、

恵理菜の大学でもバイト先でも人間関係をもたず、家庭にいる人も家族と呼べない「孤立感」と繋がります。

8日生きる蝉と自分とを重ね合わせたときに、「周りと同じなら幸せだよ」と恵理菜が考えていることがよくわかるシーンです。

ですが最終シーンの皮切りとして「8日生きる蝉が8日目に見るのは、とても綺麗なものかもしれない」というセリフが出てきます。

たとえ「普通」じゃなくても、幸せなこともあるかもしれないよ。

そんな意味ではないかと。

これは観ていて気づいたほうが「うわあー!!」となるはずなので、ぜひご自身でご覧ください。

映画を通しての全体的な感想

ちょこっとだけ、舞台設定と主観で成り立つ共感へのお話です。

「小豆島」という祈りの島の舞台設定

誘拐犯・希和子は警察など追手をまくため最終小豆島へたどり着きます。

みなさんは小豆島へ行ったことはありますか?

わたしは元気な頃に一度行きました。

小豆島のエンジェルロードを渡り切ると、その相手と一生結ばれるという都市伝説的なものがあり、カップルや友達同士でたくさん来ていました。

そんな景観とカップル向けで話題の小豆島の海岸沿いから離れると、小さな商店街を抜けて、すぐに山に入ります。

その山には少し歩くだけで数え切れなくなるくらい、お寺やプチ五重塔みたいなものがたくさんありました。

「八日目の蝉」には小豆島の伝統芸能や儀式のシーンがたくさん出てきます。

思えばそれなりに飛び回っていたわたしでも、あれほどいたるところに「祈り」が込められている場所は……京都くらいしか知りません。

恐らく離島として日本で最も「祈り」の舞台としてふさわしい場所が小豆島なのではないでしょうか。

子供を「愛する」は可能でも「愛せる」かはわからない、に共感

みなさんは自分の子供を愛せますか?

わたしは「愛する」自信はあるのですが、「愛せる」自信は、ちょっとありませんでした。

子供は好きです。生意気なところも好きです。だから保育士の免許まで取りました。

だからというわけではありませんが、自分の意思で「愛する」のは、確実にできると思います。

ただ自然に愛情がわいてきて「愛せる」かと言われると、なんだか違和感がありました。

「八日目の蝉」では恵理菜が「(子供をひとりで)産む」と言いつつも「母親になんてなれない」「どうやって愛すればいいかわからない」など、「普通」の家庭で育たなかったからこその苦難を叫ぶシーンが多々あります。

わかるー。

がんばったら「愛する」ことはできても、自然に「愛せる」か自信はないし、どうやって育てればいいかなんてまったくわからない。

そこにめちゃくちゃ共感して、最後の恵理菜が出した結論に涙が止まりませんでした。

この台詞まで書くと「八日目の蝉」を観る楽しみがなくなってしまうので、ぜひ映画で観てください。

共感の深い理由→妊娠した。障害児かも。

不安だらけの妊婦さんとか、もうすぐ父になる人とかに観てほしい作品です。

ご契約されているプライムなりU-NEXTなりでぜひご覧ください。

 

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まぁるいせかい管理人
はるか

考察家。作家。開発者。多発性硬化症+希少難病+先天性心臓奇形などをもつ障害者。病歴や薬歴は多すぎるので管理者情報参照。今までにないものを創るお仕事。京大医学部を病気により中退。ケアストレスカウンセラー、保育士などの資格をもつ。

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